Research Abstract |
前年度は、赤パンカビ(Neurospora crassa)の胞子を調製し,その分画物の化学組成並びに骨格多糖βー1,3グルカンのメチル化分析を行った。本年度は,胞子及び菌糸の各成長段階,すなわち対数増殖前期,中期,後期,定常期,死滅期の試料を調製し,アルカリ可溶βーグルカを調製した後,ToyopealHW60Fカラムを用いてゲル濾過を行い,それぞれの試料の分子量分布の変化を見た。胞子から得られたアルカリ可溶性βーグルカンの分子種は2種あり,それぞれ23万及び13万の分子量をもつものであった。これらの分子は胞子が発芽し菌糸体へ移行するのに伴って,分子種が多様化すると同時に,分子量の減少を示した。対数増殖前期においては分子量23万の分子が減少し,13万の分子が最大量を占めた。この13万の分子は菌糸の成長各段階において,ほぼ一定量で推移したのに対して,23万の方は菌の成長に伴い量的減少が著しく,対数増殖後期から定常期に至る過程では分子量6万の分子種の増加がみられ,死滅期に入るに従い,この6万の分子種への収束がみられた。これらの結果は,Nerospora crassaIFOー6068様においては,細胞が成長し,形態が変化するのに伴い,細胞壁骨格βーグルカンの分子量が著しく変化することを示している。一方これらβーグルカンの構造的変化は,菌の生産する酵素,βー1,3ーグルカナ-ゼ及びβー1,6ーグルカナ-ゼによるものと考えられる。菌の生産するβー1,3ーグルカナ-ゼの性質を明らかにするために,Aspergillus saitoiの培養濾液より得られたβー1,3ーグルカ-ゼを精製し,性質及びβー1,3ーグルカンに対する作用を明らかにした。本酵素の分子量は60,000,等電点は4.1,真鎖のβー1,3ーグルカン(Pachyman)に対しエキソ型に作用し,グルコ-スのみを精成した。又βー1,6結合の分岐をもつSchyzophylanに対しては,βー1,6結合の分岐点をとびこして分解し,グルコ-スとゲンチオビオ-スを生成した。
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