1989 Fiscal Year Annual Research Report
食品アレルギ-原因抗原によって誘導される抑制型細胞の機能解析とその応用
Project/Area Number |
01560139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野川 修一 東京大学, 農学部, 教授 (50011945)
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Keywords | 抑制型T細胞 / T細胞クロ-ン / 抗体産生 / T細胞増殖反応 |
Research Abstract |
食品アレルゲンであるαs1-カゼインをアジュバントとともにC57BL/6マウスに免役した。免疫されたマウスのリンパ節を取り出し、これに含まれている細胞を培養し、限界希釈法によりT細胞の単離を試みた。長期間培養後複数のクロ-ンが得られたが、そのうちの一つについてその細胞表面に存在している表面抗原をフロ-サイトメトリ-を用いて解析した。その結果、この細胞はThyl、CD3、CD8と呼ばれるT細胞に特異的な糖タンパク質を表現していることが明かとなった。次にこの細胞をin vitroにおける抗体産生系に加えて、αs1-カゼインに特異的な抗体産生に及ぼす影響を調べた。この細胞を加えることにより特異IgM及びIgG抗体の産生は抑制された。また、同時にT細胞の抗原特異的な増殖反応に対する効果についても調べたところ、T細胞によるチミジンの取り込みもこの細胞の添加により抑制された。さらに、他の抗原に特異的な抗体産生系に及ぼす影響に関しても検討したが、αs1-カゼイン以外の抗原刺激によるT細胞の増殖もこの細胞により阻害された。すなわち、この細胞による抗体産生系の抑制は抗原非依存的であると考えられた。しかし、リポポリサッカライドによるB細胞のIgM抗体産生に対しては何ら影響を示さなかった。最後に抗原提示細胞としてその表面にMHCクラスII分子を表現しているL細胞を用いた系に対してこの細胞を添加したところ、ここでもヘルパ-T細胞クロ-ンの増殖を抑制することが明かとなった。このことからこの細胞はヘルパ-T細胞に対して直接作用するものと考えられた。以上の実験事実から、この研究で得られたT細胞クロ-ンは免疫系においてそれを抑制的に調節する、いわゆる抑制型T細胞であることが示された。
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[Publications] A.Enomoto: "Antibodies raised against peptide fragments of bovine αs1-casein cross-react with the intact protein only when the peptides contain both B and T cell determinants." Mol.Immunol.
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[Publications] T.Takahashi: "Comparison between the antigenicity of native and unfolded β-lactoglobulin." Agric.Biol.Chem.
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[Publications] S.Kaminogawa: "Monoclonal antibodies as probes for monitoring the denaturation process of bovine β-lactoglobulin." Biochim.Biophys.Acta.998. 50-56 (1989)
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[Publications] S.Kaminogawa: "Application of monoclonal antibody to a comparative study of α-lactalbumins from various species." J.Dairy Sci.72. 1124-1129 (1989)
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[Publications] A.Ametani: "Structure of αs1-casein at an oil/water interface:an analytical approach using immunochemical methods." Agric.Biol.Chem.53. 1297-1300 (1989)