1990 Fiscal Year Annual Research Report
食品蛋白質の構造・ゆらぎ・機能相関に関する基礎的研究
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01560142
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
月向 邦彦 名古屋大学, 農学部, 助教授 (10023467)
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Keywords | 食品蛋白質 / 構造のゆらぎ / 構造・ゆらぎ・機能相関 / 圧縮率 |
Research Abstract |
当初の研究計画にしたがって、牛乳蛋白質と卵蛋白質約10種について、音速度と密度の精密測定を行い、その断熱圧縮率を決定した。得られた圧縮率は(4〜10)x10^<ー12>cm^2/dynで、これらの貯蔵蛋白質や栄養蛋白質は、プロテア-ゼやそのインヒビタ-に比べてゆらぎが大きく、輸送蛋白質より小さくなっている。蛋白質のゆらぎは、部分比容が大きく、疎水性が高いほど大きくなる傾向にあり、ヘリックス部分はダイナミックドメインとしてゆらぎを大きくする方向に作用している。圧縮率の統計解析より、Leu,Glu,Phe,Hisの4アミノ酸はゆらぎを増し、Asn,Gly,Ser,Thrの4アミノ酸は小さくする方向に寄与しており、他の12アミノ酸の影響は小さい。これらの結果は、蛋白質の構造の特異性がゆらぎにかなり敏感に反映することを示しており、統計解析より得られた回帰式を用いて、未知の蛋白質の圧縮率(ゆらぎ)を推定することが可能となった。一方、これらの食品蛋白質の圧縮率と起泡性との相関を調べた結果、ゆらぎの大きい蛋白質ほど起泡性が良くなっており、また、ゆらぎの大きい蛋白質ほどプロテア-ゼによる消化性も良いことがわかった。圧縮率の大きい蛋白質は変性の自由エネルギ-変化も小さく、ゆらぎの大きい蛋白質は構造が不安定になっていることが明らかとなった。熱安定性との相関はあまり良くないが、ゆらぎの大きい蛋白質は熱安定性が良くなる傾向が見られ、蛋白質分子内のcavityは熱や機械的摂動に対して一種の緩衝作用を持っていることが期待される。これらの結果は、構造のゆらぎが蛋白質の機能や性質の発現にとって重要な因子であることを示している。これらの研究成果は裏面に示すように、2編の論文および総説として発表されている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Kunihiko Gekko: "Flexibility of Food Proteins as Revealed by Compressibility" Journal of Agricultural and Food Chemistry. 39. 57-62 (1991)
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[Publications] Kunihiko Gekko: "Effect of Temperature on the Compressibility of Native Globular Proteins" Journal of Physical Chemistry. 93. 426-429 (1989)
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[Publications] Kuniko Gekko: "Water Relations in FoodsーAdvances in the 1980's and Trends for the 1990's (分担)" Plenum Press (ed.by H.Levine and L.Slade), 20 (1991)
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[Publications] Kunihiko Gekko: "Proceedings the IInd International Meeting on High Pressure Biology (分担)" International Group on High pressure Biology (ed.by J.Drout,J.J.Risso and J.C.Rostain), 8 (1990)