1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01560164
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二井 一禎 京都大学, 薬学部, 助手 (50165445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古野 東洲 京都大学, 薬学部, 助教授 (00026626)
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Keywords | カルス組織 / マツノザイセンチュウ / ニセマツノザイセンチュウ / ロジスティック曲線 / 増殖特性 / 親和性 |
Research Abstract |
マツノザイセンチュウの増殖特性を、マツ属内のアカマツ、クロマツなど6種の樹種、ならびにタバコ、ニンジン、アルファルファ由来のカルス組織の上で比較した。また、非病原性の近縁種ニセマツノザイセンチュウの増殖の様子も比較検討した。一方、これら線虫の寄生に伴う寄生の側の反応を明らかにするため、カルス組織内のタンニン含量の変化、カルス組織の含水率も併せて検討した。実験結果の概要は以下に示す。 1.各カルス組織上での個体数増殖経過をロジスティック式に回帰しこの式の系数として表わされる、増殖率=rと、飽和密度=k、最大密度に達するまでに要する時間の1/2の時間=t1/2を、2種の線虫と各種カルス組織間で比較したところ、kの値は意外にも、抵抗性樹種や、非マツ属植物由来のカルス上で高く、感受性マツ由来のカルスでは低い値を示した。 2.一方、増殖率rや、t1/2の値も、必らずしも各カルスが由来した植物と線虫の親和性を反映してはいなかった。 3.たゞし、増殖曲線のごく初期、即ち増殖開始後6〜8日までに限ると、これらの曲線、特に病原性のマツノザイセンチュウの各増殖曲線は、各カルスが由来した植物とこの線虫の親和性を反映しており、抵抗性のマツのカルス上では低いレベルで、又感受性のマツのカルス上では高いレベルで増殖が進行することを示した。 以上のことからカルス組織を用いた場合も、線虫の寄生のごく初期にはそれが由来した植物の持つ特性が維持されており、線虫の増殖の難易もこの特性に支配されたものになっていたが、線虫の寄生活動後急速にこの特性は失われるようである。しかし、今後カルス組織への線虫の寄生活動を蛍光顕微鏡で観察する場合には、このような初期に維持されている寄生特性の違いが、何らかの形でとらえられると期待される。
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