1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01560184
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中坪 文明 京都大学, 農学部, 助教授 (10027170)
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Keywords | セルロ-ス / 化学合成 / グリコシル化 / イミドイル基 / イミデ-ト法 / セロビオ-ス / ホスホリルオキシ基 / ホスフェ-ト法 |
Research Abstract |
セルロ-スの化学合成のキ-ポイントは、グリコシル化の際の立特異的(β-結合)ならびに位置特異的(1,4-結合)規制を同時に満足することにある。後者は、2、3、6-位に保護基を導入したグリコ-ス誘導体を用いることにより解決されるが、前者はグリコシル化についての非常に多くの既報の研究デ-タが参照され得るものの極めて困難な問題である。申請者らは、既に八量体までの一連のセロオリゴ糖の合成に成功しているが、本研究ではそれらの研究結果を踏まえ、まずセルロ-スの化学合成のための出発物の選択と合成について検討し、以下の結論を得た。 1)グルコ-ス誘導体を出発物とする場合: 高立体選択的β-グリコシル化のためにはアグリコンの3-位のベンジル基は必須である。そこで予備実験として、ベンジル基で保護したグルコ-ス誘導体のP_2O_5存在下における重合を試みた。その結果、試みた条件下ではベンジル基の脱離が認められた。そこで、グリコ-スの1-位を活性化する目的でイミドイル基を導入し、イミデ-ト法による重合を試みた。その結果、縮重合は進行せず、分子内反応生成物(1,4-アンヒドロ糖および1,2,4-オルトエステル)が高収率で得られた。この分子内反応を阻止するためには、セルロ-ス合成の出発物としてセロビオ-ス誘導体が有効と考えられる。 2)セロビオ-ス誘導体を出発物とする場合: セロビオ-スを出発物として4-位に遊離の水酸基を持ちイミドイル基が1-位に導入されたベンジル誘導体を合成し、その重合を試みた。その結果、その重合条件下ではイミデ-トは不安定でありイミドイル基のβ-脱離が進行した。そこで、より安定と考えられるホスホリルオキシ基を1-位に導入した化合物を合成し重合反応を試みた結果、四量体と思われる化合物が生成した。その結果、出発物としてセルビオ-ス、グリコシル化法としてホスフェ-ト法を用いる合成経路はセルロ-スの化学合成法として有望である。
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[Publications] Toshiyuki Takano,Yoshiko Harada,Fumiaki,Nakatsubo,Koji Murakami: "Synthetic Studies of Cellulose VIII.Effect of the 3-0 substituent group of the aglycon on β-glycosylation(2)." Mokuzai Gakkaishi. 36. (1990)