1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01560205
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小栗 幹郎 名古屋大学, 農学部, 教授 (40023402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大村 百合 名古屋大学, 農学部, 助手 (50023479)
丹羽 宏 名古屋大学, 農学部, 助教授 (80023448)
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Keywords | アユ / ニジマス / 感光色素 / HPLC / レチナ-ル / 上生体 / 網膜 |
Research Abstract |
脊椎動物では眼以外に光を感ずるいくつかの器官・組織が知られている。その1例として下等脊椎動物の魚類の上生体(あるいは松果体)をあげることができる。この上生体では、眼の視細胞とよく似た光受容細胞、即ち層板(lamella)構造を有する光受容細胞が電顕的に調べられており、概日リズムに関与することなども示唆されている。しかし、この細胞に含まれる光受容分子の化学的性質はほとんど知られていない。本実験では、眼と上生体の光受容細胞に由来するであろうとおもわれる感光色素を抽出し、その定量・定性分析をHPLC(高速液体クロマトグラフィ-)を用いて行い、両器官相互間において比較検討した。その結果、ニジマス、アユの眼および上生体に含まれている感光色素はll-cis型レチナ-ルとll-cis型3-デヒドロレチナ-ルが共存したいわゆるpaired pigmentsである事が分かった。これらは明順応によりall-trans型に異性化されるので、両光受容器官における感光色素の発色団であると考えられる。アユの眼の感光色素はレチナ-ルを発色団とする感光色素が多く、すなわちレチナ-ル優勢のpaired pigmentsであるにもかかわらず、上生体では必ずしもそうではなく、供試個体によりかなり変動する傾向がみられた。これに反して、ニジマスの場合には一定の平行関係が得られた。さらに、両光受容器官の感光色素は、明順応時の退色量において差異がみられたことより、その光異性過程が両器官で相違するなどの可能性が考えられる。予備的知見ではあるが、上生体の感光色素の光異性化過程が昆虫のそれと幾多の類似性を示すという興味深い知見も得られており、この点については今後詳しく検討する予定である。
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Research Products
(1 results)