1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01560232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 学 東京大学, 農学部, 教授 (70012028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 武祝 東京大学, 農学部, 助手 (40202329)
森 建資 東京大学, 農学部, 助教授 (00116683)
小沢 健二 農林水産省, 農業総合研究所・海外部市場経済地域研究室, 室長
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Keywords | GATT / 農業保護 / 農産物輸入制限 |
Research Abstract |
今年度は、研究参加者以外で本研究の課題に関心を持つ研究者数名の参加・報告をも交えて通算6回の研究会を開いて各自の研究成果を報告し合った。その際、対象とする時期・地域を特に限定せず、広い視野から戦後の農産物貿易に関する問題点を浮き彫りにすることにつとめた。その過程で以下の諸点が論点として明らかになった。 1.1930年代のブロック経済化が第二次大戦に帰結したという反省から、戦後、戦勝国によって自由貿易体制を保障する新たな国際経済秩序の形成が目指された。しかし、その成果たるGATTには米国・欧州諸国(特にイギリス連邦)間の思惑の対立と妥協が反映したため、重大な例外規定が設けられることとなった。 2.GATTの推進役を自認する米国自らが、自国農業保護のために(小麦)、あるいは戦略目的のために(羊毛)、GATT例外規定を援用して農産物の輸入制限を行なった。一方、米国の農産物輸入制限実施は、結果的にEECによる共通農業政策の形成を容認せざるをえない状況に米国を追い込むこととなった。 3.以上の動きの結果、GATTの実態は、その発足時の理念から遠く隔たったものへと変質した。現在GATTは、米国・EC両者による農業保護政策・過剰農産物輸出政策のせめぎ合いの場となっている。 4.戦後の急速な工業化の過程で農業部門が比較劣位となった日本では、貿易自由化の進展とともに農産物が大量に輸入されるようになった。まず、食管制度に保護され生産を維持し得た米穀とは対照的に1950年代以降小麦の輸入が急速に増加し、穀物自給率の二重構造が形成された。また、オレンジ輸入自由化を間近に控えたミカン栽培農家は、生産基盤の脆弱化と高齢化の進展のために苦しい対応を迫られている。 以上明らかになった論点をふまえて、来年度は、対象とすべき時期と地域を限定し、より具体的で綿密な研究を行って行く予定である。
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