1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01560240
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
藤本 彰三 東京農業大学, 総合研究所, 助教授 (80147488)
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Keywords | マレ-シア / 稲作技術革新 / 経営対応 / 労働節約技術 / 小農経営 |
Research Abstract |
稲作技術革新の進展によって米生産が増大している東南アジアにおいて、マレ-シアは米自給率を低下させるなど特異な稲作変化を示している。本研究は、マレ-シアにおける地域性と農家の個別性を踏まえて、稲作農業展開の実態を整理し小農開発論の構築を目指して20年計画で実施している。本年度は、過去に詳細な質問票調査を実施した3地域(6村落)のうち2カ所の分析を行った。すなわち、スブランプライとクランタンの調査村で、70年代と80年代の2回の調査結果を比較分析し、10年間における技術変化と経営展開の方向を吟味した。その結果、次の諸点が明らかになった。 1.クランタンでは、70年代は技術革新の成果が見られたが、80年代に入って耕作放棄が進み、残った稲作農家も粗放化した。しかし、肥料補助金のお陰で収量水準は向上した。 2.スブランプライでも耕作放棄が進んだが、調査村は稲作を続け、技術革新と制度革新の恩恵によって著しく生産性と収益性を向上させた。その結果、全体の25%の農家が規模拡大を進めて自立経営を確立した。 3.スブランプライでは80年頃から、コンバイン収穫、直播栽培を導入し、労働節約的な技術体系を確立した。これが規模拡大の誘因となった。一方、クランタンでは省力技術の導入が遅れたので、経営規模が小さいままであり、収益性の改善は農家経済に小さなインパクトしか与えなかった。したがって、農家はより高い機会所得を求めて農外就業へ転出する傾向を見せている。 4.農家の稲作離れおよび規模拡大による稲作専門化は、いずれも個別農家の経済合理的対応と考えられる。相反する対応のどちらを選択するかは、稲作所得水準の可能性である。高所得が期待できる条件下では規模拡大が進展するが、そうでなければ稲作離れが進む。稲作所得の規定要因として最も重要なものは経営規模と生産力であり、生物・化学的技術革新に加えて省力技術体系が必要である。
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Research Products
(1 results)