1989 Fiscal Year Annual Research Report
小腸においては吸収細胞間を通る吸収路が実在するのか
Project/Area Number |
01570013
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 寅男 九州大学, 医学部, 教授 (80037324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 桂一郎 九州大学, 医学部, 講師 (20172398)
和佐野 公二郎 九州大学, 医学部, 助教授 (90117292)
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Keywords | 小腸吸収細胞 / 吸収路 / 腸絨毛 / 細胞間接着部離開 / 凍結割断レプリカ像 / 走査型電顕 / エタノ-ル / 胆汁酸塩 |
Research Abstract |
小腸の吸収細胞間を腸内容物が通って吸収されるかどうかは、これまでに賛否両論がある。しかし、in situでのラットにおける研究では、HRP(西洋ワサビペルオキシダ-ゼ)腸管腔内投与で、吸収細胞間は、微絨毛基部の高さにある密着帯部でHRPの侵入を阻止する。したがって、HRPのような高分子のタンパク質などは、細胞間を通って吸収されることは、通常の生理的條件下ではないと云える。これを裏付けるものとして、細胞間接着部の細胞膜の凍結割断レプリカ像を観察すると、密着帯部に一致して、比較的複雑な網眼様膜内粒子の線条配列を認める。すなわち、密着帯部は隣接細胞間に網状を呈する複雑な接着がなされており、これらの接着のために、高分子物質に対する吸収路としては機能していない。 これらの接着部が離開するような状態になれば、腸内容物は吸収上皮細胞内を経由されることなく、細胞間を通り吸収され得ることが考えられる。このことを検索するために、10%エタノ-ルから20%、40%エタノ-ルを経口投与し、空腸上皮を走査型電顕で観察すると、20%以上のエタノ-ルで、腸絨毛上皮のうち、絨毛先端部の細胞間接着部に離開が認められ、濃度が高くなると、上皮は脱落し、粘膜固有層が露出することがわかった。次に、胆汁酸塩を経口投与し、空腸絨毛を同様の走査型電顕で検索した結果、濃度と胆汁酸の種類により、細胞間接合部の離開の程度に差が見られた。タウロコ-ル酸塩、タウロウルソデオキシコ-ル酸塩では、200mMでも離開は見られず、コ-ル酸、デオキシコ-ル酸、ウルソデオキシコ-ル酸の各塩では50mMで離開が認められる。以上の結果から、食事の條件によっては、細胞間吸収路が存在し得る可能性が示唆されるが、今後の詳細な検討が必要である。
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[Publications] 山元寅男: "序論 消化吸収の形態学的基礎" 「消化と吸収」. 12. 53-55 (1989)
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[Publications] 山元寅男: "消化吸収の形態学" クリニカ. 17. 5-10 (1990)
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[Publications] Nakamura,K.,Yamamoto,T.: "Morphological changes of rat intestinal mucosa induced by alcohol administration." Journal of Clinical Electron Microscopy. 22. 707-708 (1989)
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[Publications] Yamamoto,T.,Nakamura,K.,Zhang,X.J.,Wada,F.: "What does the intercelluar absorption passage way induce in the small intestine?" Cell and Tissue Research.