1990 Fiscal Year Annual Research Report
人工変異体を用いたヘモグロビン生理機能発現機序の研究
Project/Area Number |
01570045
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今井 清博 大阪大学, 医学部, 助教授 (50028528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石森 浩一郎 京都大学, 工学部, 助手 (20192487)
宮崎 源太郎 大阪大学, 基礎工学部, 教務職員 (50166146)
渡邉 学 大阪大学, 医学部, 助手 (30182950)
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Keywords | 人工変異体 / ヘモグロビン / 部位特異的変異導入 / タンパク質工学 / アミノ酸置換 / 組換えDNA / アロステリック効果 |
Research Abstract |
組換えDNAを用いた部位特異的変異導入法によって、特定のアミノ酸置換を有する人工変異ヘモグロビンを合成し、それらの酸素結合機能の測定と解析を行なって、ヘモグロビンのアロステリック生理機能発現にとって鍵となるアミノ酸残基の役割を実験的に検証した。 今年度は、前年度に合成したHb Y145βF(Tyrー145β→Phe)の酸素平衡曲線を、MonodーWymanーChangeux(MWC)のアロステリック・モデルによって解析し、さらに、Hisー92β(近位His)をValまたはAspに置換した変異ヘモグロビン(Hb H92βV、Hb H92βD)を合成して、それらの酸素結合機能の測定と解析を行った。 正常ヘモグロビン(Hb A)に比べて、Hb Y145βFのRーstate、Tーstateに対する酸素親和性(K_R、K_T)は共に増加し、アロステリック定数(L_0)は同等またはやや増加していた。また、Hb Aに比べて、Hb Y145βFのT_0→R_0転移の自由エネルギ-(△G_<0^<trans>>)は0.5kcal/molだけ、T_4→R_4転移の自由エネルギ-(△G_<4^<trans>>)は2.8kcal/molだけ、それぞれ増加した。Tyrー145β→Pheなるアミノ酸置換による、K_r、L_0、△G_<0^<trans>>の変動を、Tyrー145βとValー98βとの間の水素結合の消失のみを基礎に説明するのは困難である。これらのMWCパラメ-タの挙動は、Hb Y145βFの酸素平衡曲線が強い非対称性を示す事実と関係があるらしい。 Hb Aに比べて、Hb H92βV、Hb H92βDの酸素親和性は7〜9倍高く、Bohr効果は消失し、イノシトル六燐酸の効果と協同効果は非常に弱まっていた。このように、近位Hisを中性、陰性のアミノ酸で置換すると、酸素親和性が高くなり、アロステリック効果がほとんど消失した。しかし、M型Hbとは異なり、変異鎖のヘム鉄が常に酸化状態にあることはなかった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] K.Imai: "Molecular mechanism of the physiological function of hemoglobin studied by using artificial mutants" Japanese Journal of Physiology. 40. S61 (1990)
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[Publications] 足立 伸一: "ヒトミオグロビンのヘム近傍アミノ酸のSiteーdirected mutagenesisによる置換とその効果" 生物物理. 30. S307 (1990)
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[Publications] K.Imai: "Siteーdirected mutagenesis in haemoglobin: Functional role of tyrosineー42(C7)α at the α1ーβ2 interface" Journal of Molecular Biology. 219. (1991)
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[Publications] 籏野 昌弘編: "Protein Structural Analysis,Folding and Design" 日本学会出版センタ-およびElsevier, 237 (1990)
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[Publications] 池原 森男編: "Protein Engineering: Protein Design in Basic Research,Medicine,and Industry" 日本学会出版センタ-およびSpringerーVerlag, 355 (1990)