1989 Fiscal Year Annual Research Report
腹部内臓循環の研究(腹腔動脈支配領域の血流調節機序)
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01570051
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
成瀬 達 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (50180550)
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Keywords | 腹部内臓循環 / 左胃動脈血流 / 腹腔動脈血流 / 摂食後の血流 / 非アドレナリ・非コリン作動性神経 / 消化管ホルモン / vasoactive intestinal peptide / 意識下 |
Research Abstract |
腹部内臓循環、特に腹腔動脈流域の血流調節を明らかにするため、摂食時の血流増加機序および血流増加因子の検索を行なっ。ビ-グル犬を用い、エ-テル麻酔下に腹腔動脈および上腸間膜動脈(13頭)または左胃動脈(11頭)に電磁血流計の慢性埋め込み型プロ-ブを装着した。さらに5頭の犬には門脈血を採取するため門脈にカテ-テルを留置した。実験は1週間以上の術後回復機期を置いた後、意識下に血流の測定を行なった。 1.牛乳300mlの経口投与により、腹腔動脈血流は空腹時値の180%に、左胃動脈血流は270%に一過性に上昇した。胃をゴム風船(300ml)により伸展させることにより、牛乳の約50%の一過性の増加反応が得られた。 2.摂食および胃伸展に対するこれらの反応は、節遮断剤ヘキサメソニウムおよび粘膜麻酔剤オキセサゼインにより抑制されたが、アトロピン、フェノオキシベンザミン、プロプラノ-ルにより抑制されなかった。 3.ペンタガストリン(酸分泌に関する50%有効量)による左胃動脈血流の増加は僅か10%であった。腹腔動脈血流は膵外分泌を刺激するセクレチンおよびコレシストキニン(CCK8)により有意の増加を示さなかった。 4.門脈血中vasoactive intestinal peptide(VIP)は摂食後、一過性に上昇し、腹腔動脈および左胃動脈血流と同様のパタ-ンを示した。また静脈より合成VIPを投与すると、腹腔動脈および左胃動脈の血流は増加したが、上腸間膜動脈の血流は有意に変化しなかった。 結論:1)摂食後の腹腔動脈血流の増加は、食物による化学的、機械的刺激による胃動脈血流の増加に一部起因する。2)この増加反応には非アドレナリン・非コリン作動性神経反射が関与している。3)この血管作動性神経伝達物質として、VIP等の神経ペプチドの関与が示唆される。4)摂食により放出される消化管ホルモン(ガストリン、セクレチン、CCK)の関与は定量的にには小さい。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] M.KATO,S.NARUSE, et al: "Postprandial gastric blood flow in conscious dogs." American Journal of Physiology. 257. 111-117 (1989)
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[Publications] 成瀬達、井上孝、望月徹、他: "モルモットVIPの血流作用「消化管ホルモン」" 医学図書出版, (1990)