1990 Fiscal Year Annual Research Report
発癌プロモ-ション過程における上皮・間葉間の認識制御機構に関する研究
Project/Area Number |
01570205
|
Research Institution | Sapporo Medical Collge |
Principal Investigator |
榎本 克彦 札幌医科大学, 医学部(病理学), 助教授 (20151988)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 淳夫 札幌医大, 医学部(病理学), 助手 (90208538)
森 道夫 札幌医大, 医学部(病理学), 教授 (00045288)
|
Keywords | 発癌プロモ-ション過程 / 細胞接着装置 / ギャップ結合 / コネクシン32 / 肝芽腫細胞 / 分化誘導 / 乳癌細胞 / 造腫瘍性 |
Research Abstract |
細胞間の認識制御機構を研究する上で、基質・細胞間および細胞間同士の接着分子についての解析が不可欠である。我々は細胞接着装置の一つで、細胞間コミュニケ-ションに関与するギャップ結合に対する抗体を作製し、上皮・間葉間の相互作用の解析に応用した。1)抗ギャップ結合抗体の作成:上皮細胞のギャップ結合の多くは、コネクシン32(C×32)蛋白から構成されている。C×32のアミノ酸一次構造から細胞質ドメインのペプチドを合成し、これを用いてポリクロ-ナル抗体を作製した。この抗体の特異性は免疫電顕およびWestern Blot法により確認した。2)発癌プロモ-ション過程におけるC×32の変化:発癌剤(DEN)投与により誘導された前癌病変・肝癌組織をC×32抗体で検索すると、これらの病変でギャップ結合が著明に減少していることが明らかとなった。従って癌化の過程では上皮間・上皮間葉間の細胞間コミニュケ-ションに異常をきたしていることが示唆された。3)線維芽細胞とのcoーcultureによるヒト肝芽腫細胞HuH6の形質発現の制御:HuH6はcーAMPで処理すると、癌胎児蛋白であるAFP産生の減少やアルブシンの産生など分化形質の誘導がみられた。同時にC×32抗体で検索するとギャップ結合の再構成や細胞間コミニュケ-ションの回復がみられた。HuH6を線維芽細胞BALB3T3とCoーcaltureすると、CーAMP処理と同様.細胞間のギャップ結合の出現と細胞間コミニュケ-ションの回復が認められ、線維芽細胞が肝芽腫細胞の分化を誘導することが示された。4)線維芽細胞によるヒト乳癌細胞MCF7の造腫瘍性の制御:10^6個のMCF7をヌ-ドマウス脾内へ注入すると、5/6のマウスに脾内腫瘍の形成をみた。一方、MCF7と同数のヒト線維芽細胞を混合して脾内へ注入すると脾内腫瘍の形成が抑制された。 以上の結果から、癌化の進展に伴ない細胞接着装置に異常が認められること、また腫瘍細胞の形質が線維芽細胞により修飾される事が示された。
|
-
[Publications] 榎本 克彦,中島 康雄,他: "発癌と局所因子" Medical Immunology. 19. 339-343 (1990)
-
[Publications] 榎本 克彦,鐘雲,他: "肝細胞の癌化と細胞膜の異常 ー接着装置特にgap junctionを中心としてー" 肝胆膵. 21. 773-779 (1990)
-
[Publications] Sawaki,M.,Enomoto,K.,et al.: "Phenotype of preneoplastic and neoplstic liver lesions during spontaneous liver carcinogenesis of LEC rats." Carcinogensis. 11. 1857-1861 (1990)
-
[Publications] Enomoto,K.,Takahashi,H.,Mori,M.: "A new rat model for the study of hepatocarcinogenesis." J.Gastroenterol.Hepatol.(1991)
-
[Publications] Nakajima,Y.,Enomoto,K.,et al.: "Immunoelectron microscopic and immunohisto chemical demonstration of the connexin 32 gap junction protein in rat liver." J.Clin.Electronmicroscopy. (1991)
-
[Publications] 佐藤 睦,榎本 克彦: "ヒト肝芽腫細胞の分化形質誘導に関する研究 ー分化誘導物質ならびに線椎芽細胞とのcoーculture" 札幌医学雑誌. (1991)