1989 Fiscal Year Annual Research Report
モデル膜(リポソ-ム)を用いたブドウ球菌の毒素の細胞膜障害機構の解析
Project/Area Number |
01570230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨田 敏夫 東京大学, 医科学研究所, 助手 (00126129)
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Keywords | ブドウ球菌α毒素 / 膜障害機構 / リポソ-ム / 膜の流動性 / 毒素六量体形成 |
Research Abstract |
ブドウ球菌α毒素は、細胞膜中で会合して六量体を形成する。この毒素六量体は、小さな分子やイオンの透過を許すHydrophilic poreとして働いて細胞障害を引き起こすと考えられている。しか、毒素が膜に結合してから六量体を形成するメカニズム及びその膜中でのトポロジ-についての詳細は未だに不明である。本研究においては、物理的化学的性質の明らかなモデル膜(リポソ-ム)を用いて、これらの問題を検討して以下の結果を得た。 (1)α毒素は、極性基としてコリン残基を有するリン脂質(ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン)を含有する膜に特異的に結合する。(2)膜に結合したα毒素の状態には、溶血活性を保持した結合状態と、溶血活性を失った結合状態の二つの結合状態が存在する。(3)溶血活性を保持した状態から溶血活性を失った状態への移行は、膜が流動的状態(即ち、リン脂質膜が液晶状態であるか、又はコレステロ-ルを20-30モル%以上含有する状態)にある場合に限り迅速に(秒単位で)進行する。(4)この溶血活性を失った状態への移行に伴って六量体形成が見られるが、六量体形成反応は分単位で進行する比較的遅い反応である。これらの結果から、単量体として膜に結合したα毒素は、膜が流動性の高い状態にあると、溶血活性を保持した単量体結合状態から一時的に溶血活性を失った単量体状態をへて六量体状態に移行すると考えられる。 リポソ-ム膜への結合あるいは六量体形成に関与する毒素のドメインを決定する為に、α毒素に対するモノクロ-ン抗体の調製を行っているが、現在迄に抗α毒素抗体を産生するハイブリド-マを12株得ている。更に2、3株のハイブリド-マが得られるものと期待される。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Tomita: "Influence of membrane fluidity on the assembly of a channel forming protein,Staphylococcus aureus alphatoxin,in liposome membrane" Submitted to J.Biol.Chem.
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[Publications] 富田敏夫: "ブドウ球菌α毒素の膜障害機構について" 日本細菌学雑誌. 44. 67 (1989)
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[Publications] 富田敏夫,渡辺征、保田立二: "ブドウ球菌α毒素の膜障害機構について-膜の流動性と毒素六量体(非可逆的結合状態)形成との関係" 日本細菌学雑誌. 44. 266 (1989)
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[Publications] Tomita,T.,Watanabe,M.,Takahashi,T.,Kumai,K.,Tadakuma,T.,and Yasuda.T.: "Temperature-sensitive release of adriamycin,an amphiphilic antitumor agent,from dipalmitohlphophatidylcholine-cholesterol liposomes" Biochim.Biophys.Acta. 978. 185-190 (1989)
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[Publications] Nakata,M.,Tomita,T.,and Kanegasaki,S.: "Inhibitory effect of antibiotic cerulenin on the respiratory burst in/phagocytes.I.Effects of cerulenin on active oxygen-generation and lipid metabolism" J.Antibiotics. 42. 1171-1177 (1989)
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[Publications] Nakata,M.,Tomita,T.,Iizuka,T.,and Kanegasaki,S.: "Inhibitory effect of antibiotic cerulenin on the respiratory burst in phagocytes.II.Inhibition byceru cerulenin of intracellular calcium mobilization" J.Antibiotics. 42. 1178-1183 (1989)