1990 Fiscal Year Annual Research Report
アジュバントを用いたスプレ-式インフルエンザワクチンの開発に関する基礎的研究
Project/Area Number |
01570260
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Research Institution | National Institute of Health |
Principal Investigator |
田村 慎一 国立予防衛生研究所, 病理部, 室長 (20100084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉田 毅 国立予防衛生研究所, 病理部, 部長 (50012779)
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Keywords | コレラトキシンBサブユニット / ヘマグルチニン / 経鼻接種 / IgA抗体 |
Research Abstract |
インフルエンザウイルスより分離精製したヘマグルチニン(HA)分子を、無毒のアジュバントであるコレラトキシンのサブユニットB(CTB)と共に経鼻接種し、4週後にさらにHA分子のみを2次接種したマウスにおいて次の結果が得られた。(1)2次接種2週後の致死量のウイルス感染に対して完全な防御を示した。このマウスの鼻洗浄液中には高いレベルの抗HA IgA抗体が検出された。(2)気道の洗浄液中の抗HA IgA抗体の比活性(全IgA抗体中の抗HA IgA抗体の割合)は血中のそれの約10倍であった。即ち、抗HA IgA抗体が気道で活発に合成分泌されていることが示された。一方、気道の抗HA IgA抗体の比活性は血中のそれと変わらず、局所のIgGの多くが血中から移行したものであることが示された。(3)気道洗浄液からアフィニティカラムによってIgA抗体を精製濃縮した。このIgA抗体は、免疫に用いたHA分子の起源ウイルスに対する抗HA活性ばかりでなく、同じ亜型の他のウイルスや異なる亜型のウイルスに対しても交差反応性を示した。しかもこの交差反応性はIgGに比して数倍高かった。(4)精製Iga抗体の大部分が多量体として分画され、一方、IgGは単量体として分画された。(5)免疫動物の気道に検出される相当量の抗HA IgA抗体を予め正常マウスの気道に受動免疫しておくと、その3時間後に投与された致死量のウイルスによる感染が全く阻止された。一方、非特異的なIgA抗体の受動免疫によってはこのような感染阻止はみられなかった。 以上の結果は、現行のワクチン成分の中のHA分子のみをCTBと共に経鼻接種することによってウイルス感染を阻止できること、また、HA分子に対する気道の交差反応性の高いIgA抗体が感染阻止を直接媒介できることを示している。従って、HA分子とCTBの経鼻接種ワクチンは夾雑物の少ない、しかも変異ウイルスに対する交差反応性をも持つ効率の良い新ワクチンになり得る。
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