1989 Fiscal Year Annual Research Report
母体ビオチン欠乏状態による奇形発現機序の形態学的・生化学的解析
Project/Area Number |
01570282
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
遠藤 晃 山形大学, 医学部, 教授 (30018684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 敏明 山形大学, 医学部, 助教授 (30091846)
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Keywords | ビオチン欠乏状態 / マウス / 形態形成 / 胎児発育 / ビオチン量 |
Research Abstract |
マウスを妊娠中ビオチン欠乏状態にすると、顔面頭部の異常が誘発されるが、この発現機序については、未だ明らかではない。そこで、本研究では妊娠中期の胎児発育の様子とビオチン量の変化を検討した。 妊娠マウス(ICR)にビオチン欠乏飼料を与え、妊娠12日あるいは妊娠15日に開腹した。胎児の体重を測定した後、肢芽および二次口蓋突起の分化状態を形態学的・組織学的に観察した。肢芽の分化状態は、肢芽における指放線間隙数を数えて、その指標とした。口蓋突起については、その形成過程を数値化して、分化状態を評価した。また、妊娠中のビオチンの体内動態を知るために、これらの胎児および母体肝臓のビオチン量を、バイオアッセイ法で測定した。 母体がビオチン欠乏状態になると、妊娠12日において既に胎児の発育(体重および体長)に遅れがみられ、肢芽における指放線間隙数も低下していた(対照群平均7.6:欠乏群6.7)。妊娠15日では、ビオチン欠乏胎児で小顎症(95.8%)、短肢症(42.1%)および外脳症(11.1%)などの形態学的な異常が観察された。また、二次口蓋突起の形成をみると対照群ではほとんどの胎児(99.5%)で突起の融合がみられたが、ビオチン欠乏胎児ではわずか13.5%であり、ビオチン欠乏状態で口蓋突起の分化の遅れがみられた。これらの頻度は、出産直前で観察した各々の奇形の出現頻度と一致していた。ビオチンの体内動態を見ると、ビオチン欠乏症胎児においてはビオチンは殆ど検出されなかった(0.5ng/g以下)。一方、対照胎児のビオチン量(457.6ng/g)は、母体のおよそ10倍であった。なお、妊娠中期において、ビオチン欠乏胎児の顔面頭部に組織学的な変化は観察されなかった。このように、妊娠中期においてマウス胎児のビオチン要求量が高くなっており、ビオチンは、少なくともマウスにとっては、胎児の発育および形態形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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