Research Abstract |
アルツハイマ-病の脳でアンモン角などにアルミニウムの増加の報告があり(Crapperら,1973),今回我々は家兎の小脳延髄槽内,硬膜下及び脳実質内に,アルミニウム塩を投与し,神経細胞に一種の神経原線維変化を生じるか否か,生じるならばその変化はアルツハイマ-病の場合と比較してどのような違いがあるかを明らかにする目的で組織学的検討を加えた。実験用動物は体重2.5〜2.8kgの雄性家兎25羽。リン酸アルミニウムの調製はKlatzoらの方法に準じた。投与部位及び投与量は以下の投与6群及び対照群に分類した。第1群(5羽);後頭下穿刺により髄液0.1mlを吸引除去後同量のリン酸アルミニウム溶液を小脳延髄槽内に投与。第2群(2羽);小脳延髄槽内投与0.2ml。第3群(3羽)及び第4群(2羽);硬膜下に各0.1ml,0.2ml投与。第5群(3羽)及び第6群(2羽);脳実質内に各0.1ml,0.2ml投与。対照群;無処置の家兎8羽をNembutalの過量麻酔(60mg/kg)により安楽死させた。平均生存期間は第1群が11.3±2.1日,第3群が17.3±4.5日,第5群が14.0±1.0日で,第2群及び第4群の各1羽は生存中(但し,生存期間0.5日の1例を除外)で,他の各1羽11日生存。第6群は18日と12日生存であった。上記各投与群の投与後の経過は,投与直後一時的に運動失調がみられたが,時間の経過につれ回復,摂食,飲水行動も回復した。死亡前日ないし死亡当日の四肢及び躯体筋の緊張度が高まり,異常姿勢,運動失調,運動麻痺,痙攣が持続し,その後呼吸停止する動物がみられた。死亡後1〜12時間以内に剖検。大脳,小脳,延髄,脊髄を摘出し,ホルマリン固定した。パラフィン包埋後,4μm,12μmの切片を作製し,H・E染色,LFB染色,Bodian染色,Bielschowsky染色,Congored染色,GFAP染色を行った。その結果は,第1群の生存期間0.5日の1例を除いて全例に,アリツハイマ-原線維変化と極めて類似した所見が認められ,特に海馬において著明であった。以上の結果から,アルミニウムが実験的に神経原線維変化を起こしうることは確認された。
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