1989 Fiscal Year Annual Research Report
マウス実験自己免疫性甲状腺炎の発症を決定するチログロブリン抗原決定基の解析
Project/Area Number |
01570349
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
河野 陽一 千葉大学, 医学部小児科, 講師 (60161882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樽谷 修 東京理科大学, 基礎工学部, 助教授 (40008602)
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Keywords | チログロブリン / 慢性甲状腺炎 / 実験自己免疫性甲状腺炎 / 抗原決定基 / 自己免疫応答 |
Research Abstract |
チログロブリン(Tg)は、その分子表面に数多くの抗原決定基を持つ蛋白抗原である。我々は、このTg分子上の抗原決定基のうち特定の抗原決定基が、慢性甲状腺炎患者における自己免疫応答(自己抗体・T細胞)にて認識されている事実を明らかにしてきた。しかし、自己抗原のそれぞれの抗原決定基に対する免疫応答の調節機構およびその異常は解明されていない。今回は、異なったTg抗原決定基に対する自己免疫応答とその調節機序を解析する目的で、Tgに高応答性および低応答性のマウスにマウスTgあるいは同Tgのフラグメントを免疫し、TgあるいはTgフラグメントに対する応答性を検討した。実験系は、in vitro T細胞芽球化反応によった。その結果、以下の事実が明らかとなった。1.V8プロテア-ゼ処理を行なったマウスTgから、HPLCにより分子量264K-17Kの6つのTgフラグメント(Fr)が得られた。2.Tgに対して高応答性マウスであるCBAとBIO.Aマウスは、Tgで免疫するとTgおよびTgフラグメント、Fr1-Fr6に応答した。3.Tgに対して低応答性のBALB/CとBIOマウスは、Tgで免疫すると、Tgには応答しないがTgフラグメントに反応し、特にFr3、4、5に高い応答を示した。4.高応答性マウスであるCBAをTgあるいはTgFr4で免疫すると、ともにマウスTgに対する高い応答がみられた。一方、低応答性マウスであるBALB/CにマウスTgを免疫した場合には、Tgに反応性を示さないが、TgFr4を免疫するとTgに対して応答がみられた。このように、Tgに対して低応答性のマウスが、Tgには応答しないが特定のTgフラグメントに対して応答を示した事実は、Tgに対する自己免疫応答が特定の抗原決定基を認識するregulatory細胞により調節されていることを示唆している。5.現在、これらマウスTgおよびTgフラグメントに対する自己免疫応答と甲状腺炎の発症との関係を、実験自己免疫性甲状腺炎モデルマウスを用いて解析している。
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[Publications] 勝木利行: "高応答性マウスおよび低応答性マウスT細胞のチログロブリンに対する特異性について" 日本内分泌学会雑誌. 65. 272 (1989)
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[Publications] 石北敏一: "血清チログロブリンの不均一性" 日本内分泌学会雑誌. 65. 272 (1989)
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[Publications] 杉原茂孝: "特定のT細胞分画の除去によって自然発症するマウス自己免疫性甲状腺炎(I)" 日本内分泌学会雑誌. 65. 385 (1989)
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[Publications] 丸屋聖爾: "特定のT細胞分画の除去によって自然発症するマウス自己免疫性甲状腺炎(II)" 日本内分泌学会雑誌. 65. 385 (1989)
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[Publications] 河野陽一: "特定のT細胞分画の除去によって自然発症するマウス自己免疫性甲状腺炎(III)" 日本内分泌学会雑誌. 65. 385 (1989)
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[Publications] 勝木利行: "チログロブリンの抗原性:ヨウ素化反応のチログロブリン抗原構造に及ぼす影響について" 日本内分泌学会雑誌. 65. 1070 (1989)
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[Publications] 斉藤公幸: "チログロブリンのヨウ素化合成ペプチドを用いたチログロブリンの抗原構造の解析" 日本免疫学会総会・学術集会記録. 19. 390 (1989)
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[Publications] 河野陽一: "自己抗原:コラ-ゲン/チログロブリン" 細胞工学. 8. 966-972 (1989)
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[Publications] 河野陽一: "慢性甲状腺炎と甲状腺ペルオキシダ-ゼ・甲状腺ペルオキシダ-ゼの抗原決定基" 医学のあゆみ. 150. 825 (1989)
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[Publications] Kohno Y.: "Anti-thyroid peroxidase antibody activity in sera of patients with systemic lupus erythematosus." Clin.Exp.Immunol.75. 217-221 (1989)
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[Publications] Naito N.: "Anti-thyroglobulin autoantibodies in sera from patients with chronic thyroiditis and from healthy subjects:differences in cross-reactivity with thyroid peroxidase." Clin.Exp.Immunol.(1990)
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[Publications] Sugihara S.: "Autoimmune thyroiditis induced in mice depleted of particular T cell subsets.II.Immunohistochemical studies on the thyroiditis lesion." Regional.Immunol.(1990)
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[Publications] Sugihara S.: "Autoimmune thyroiditis induced in mice depleted of particular T cell subsets.III.Analysis of regulatory cells suppressing the induction of thyroiditis." Int.Immunol.(1990)