Research Abstract |
[目的]コ-ラゲンは心臓の主要構成蛋白の一つであり,圧負荷に対する心肥大過程で変化し,その病態形成,及び心機能に影響を及ぼすものと考えられている.心臓にはこれまで五種類のコラ-ゲンタイプが存在することが明らにされているが,心肥大過程でのコラ-ゲンの量的変化,及び質的変化(コラ-ゲンタイプの変化)についての報告は少ない.しかも従来の方法では主にI型,III型は可能であったが,更にV型コラ-ゲンも含めた詳細な解析は不可能であった.我々はI型,III型,V型,コラ-ゲンタイプの変化を同時に解析できる方法を用いて,肺高血圧に伴う右室溝大進展過程におけるコラ-ゲンの変化を解析した.[方法]6週令,雄SDラットにモノクロタリン(M)を皮下注し,右室肥大を誘発した.コラ-ゲンタイプは組織より酸可溶性コラ-ゲンを抽出後,チオグリコ-ル酸を用いた.nonーinterrupted SDSーPAGEにより解析した.また,組織のコラ-ゲン(C)含量も測定した.[結果](1)M投与後2Wより,有意な右室肥大を認め,4W後には著明な右室肥大を認めた.(2)組織脱脂乾燥重量当りのC含量はM投与後,2W,4W目いずれもコントロ-ル群と有意な変化は認めなったが,2W目より右室重量は有意に増加したので,Cの総量は2Wより有意に増加した.(3)Cタイプに関しては,M投与後2W目にはIII型Cが有意に増加し,I型Cは反対に減少した.一方,4W目にはIII型,V型Cが有意に増加し,I型Cが減少した.(4)心肥大を認めない左室ではいずれの時期にもC総量,Cタイプの変化は認めなかった.[結語]圧負荷に伴う右室肥大進展過程で,コラ-ゲンの量的,質的リモデリングが生じることが明かとなった.これらコラ-ゲンの量的,質的変化が病態形成に関与し,また心機能にも影響を及ぼす可能性が示唆された.
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