1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01570678
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松田 保 金沢大学, 医学部, 教授 (30072979)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 英理子 金沢大学, 医学部・附属病院, 医員
朝倉 英策 金沢大学, 医学部・附属病院, 助手 (60192936)
|
Keywords | エラスタ-ゼ / FDP / トロンボモジュリン / 慢性骨髄性白血病 / α.プロテイネ-ス・インヒビタ- / 血管障害 / 糖尿病 |
Research Abstract |
顆粒球中のエラスタ-ゼは,試験管内でフィブリノゲン,フィブリンを分解し,顆粒球の著明に増加した慢性骨髄性白血病患者における,出血性素因の一因となる可能性がある.また,急性前骨髄球性白血病の白血病細胞中には極めて多量のエラスタ-ゼが含まれていて,それがフィブリンの溶解や凝固因子の分解を生じてそのほとんどの例に合併するDICの凝固異常や出血傾向を促進している可能性がある.今年度は,エラスタ-ゼと流血中のトロンボモジュリン(TM)との関連について検討した.対象は通常エラスタ-ゼが著しく増加し,しかもDICを生じない慢性骨髄性白血病患者である.患者血漿中のエラスタ-ゼの存在を反映するエラスタ-ゼとその阻止物質であるα_1プロテイネ-ス・インヒビタ-との複合体(Eーα_1PI)は著明に増加していた.血中のFDPは軽度に増加していたが,血小板数は正常であり,トロンビン・アンチトロンビンIII複合体,プラスミン・α_2プラスミンインヒビタ-複合体も増加しないので,DICは存在せず,FDPの増加はエラスタ-ゼによるフィブリノゲンの分解を反映している可能性が強いと思われた.なお,Eーα_1PIの血漿中濃度は,血漿中のTMの濃度と有意に正相関した(n=39,r=0.81,p<0.001).TMは血管内皮中に存在する重要な凝固阻止物質であるが,流血中のTMは血管内に顔を出している抗凝固活性を有する部分が血管内皮を貫通している部分から切断されたもので,機能を有しないと考えられる.エラスタ-ゼはおそらくこの切断に関与しているのであろうと思われる.この点,エラスタ-ゼは,従来の血栓阻止的に作用しているとの考え方とは逆に,血管障害性に働いている可能性も考えられる.われわれは糖尿病患者において,Eーα_1PIが増加している成績を得ているが,むしろエラスタ-ゼの増加が糖尿病の血管障害の進行を加速しているのかも知れない.
|
-
[Publications] 魚谷 千佳,朝倉 英策,斉藤 正典ほか: "糖尿病における血管内凝固幹性化と血中エラスタ-ゼーα,プラテア-ゼインヒビタ-の検討" 動脈硬化. 16. 935-938 (1988)
-
[Publications] E.Morishita,M.Saito,H.Asakura,et al.: "Increased levels of plasma thrombomodulin in chronic myelogenous leukemia" American Journal of Hematology.