1989 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄腫蛋白の糖鎖変異に関する研究ー糖鎖変異と細胞内糖転移酵素活性との関連
Project/Area Number |
01570686
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金山 良男 大阪大学, 医学部, 助手 (30158852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 浩久 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
烏野 隆博 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
西浦 哲雄 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
米沢 毅 大阪大学, 医学部, 講師 (50028560)
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Keywords | 骨髄腫 / 免疫グロブリンG / 糖蛋白糖鎖 / 糖転移酵素 |
Research Abstract |
種々の臨床病期の骨髄腫患者血清につき、レクチン解析ならびにHPLC解析を行った結果、IgG骨髄腫症例の血清IgGモノクロ-ナル(M)蛋白が、非腫瘍性M蛋白や反応性に増加したポリクロ-ナルIgGとは異なり、末端のガラクト-スを欠いた構造を持った糖鎖が増加していること(hypogalactosylation)、およびその所見が病期の進んだ症例ほど顕著であることを明らかにした。その成因を解明するため、糖鎖組成を異にし、かつ骨髄腫瘍細胞比率の高い症例を選び(良性疾患ならびに骨髄腫細胞の少ない症例では、形質細胞を高純度に酵素活性が測定可能な量まで濃縮することが困難であった)細胞内糖転移酵素活性を測定したところIgGがhypogalactosylationを呈していた症例では細胞内のgalactosyltransferaseとNーacetylglucosaminyltransferase IIIの活性比が低く、逆に正常パタ-ンに近い症例では高いという対応関係が存在することを見いだした。今回の成績により、IgG糖鎖組成が分泌細胞である形質細胞の糖転移酵素活性によって決定されていることを直接証明し得た。また、この研究を進める過程で、原因不明のリンパ増殖疾患であるCastleman diseaseにおいても血清中に増加したポリクロ-ナルIgGが同様にhypogalactosylationを呈していることを見いだした。我々は骨髄腫ならびにCastleman diseaseの病態にILー6が関与しているという最近の知見に着目し、これらの疾患での細胞内糖転移酵素の変異および分泌されるIgGの糖鎖変異が共にILー6の生理作用の結果であるとの仮説に基づき、現在リンパ球培養系にILー6を添加しその影響につき検討中である。一方、糖転移酵素変異は膜糖蛋白糖鎖組成も変異させ、リンパ球機能にも影響を及ぼす可能性がある。この観点から、糖鎖合成阻害剤を正常人リンパ球培養系に添加したところ、培養系によって全く異なった効果を発揮することを見いだしている。
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[Publications] 烏野隆博: "αーグルコシダ-ゼ阻害剤カスタノスペルミンのIgG産生細胞に及ぼす影響" 日本血液学会雑誌. 52(2). 330 (1989)
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[Publications] 中尾浩久: "全身性形質細胞増多症におけるIgGの糖鎖変異" 臨床血液. 30(9). 1562 (1989)
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[Publications] 烏野隆博: "PWM誘導B細胞分化に対するカスタノスペルミン、スウェンソニン及びシアリダ-ゼの影響:細胞表面糖鎖の意義" 日本血液学会雑誌. 53(2). 338 (1990)
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[Publications] 西浦哲雄: "骨髄腫蛋白における糖鎖の変異" 日本臨床代謝学会記録. XXVI. (1989)
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[Publications] Tetsu Nishiura: "Carbohydrate analysis of immunoglobulin G myeloma Proteins by lectin and HPLC:Role of glycosyltransferases in the Structure" Cancer Research.