1990 Fiscal Year Annual Research Report
原発腫瘍切除後の転移促進機序の解析とその免疫学的抑制
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01570720
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
内藤 和世 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (90164102)
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Keywords | 腫瘍切除後転移促進 / concomitant immunity / sinecomitant immunity / 特異免疫療法 / MTP / インタ-ロイキン |
Research Abstract |
原発腫瘍の外科的切除は転移巣の増大をもたらし、癌治療にとり大きな問題の一つである。既に昨年度の研究成果で明らかにしたように、このような腫瘍切除後の転移促進機序として(1)原発腫瘍の増大に伴い宿主に誘導される転移抑制活性(concomitant immunity)が腫瘍切除により失活すること、(2)原発腫瘍切除後の宿主に存在する腫瘍特異的転移抑制活性(sinecomitant immunity)の力が弱いこと、があげられる。そこで、原発腫瘍切除後の転移、再発の防止策として、concomitant immunityの補充とsinecomitant immunityの強化が必要であると考えられる。本年度の研究では、肺、リンパ節、肝、腹膜転移と局所再発モデルを用いて、免疫療法効果について検討した。その結果、(1)可溶性腫瘍特異抗原(2.5%ブタノ-ル抽出、等電点電気泳動精製分画)とサイクロフォスファマイド(25mg/kg)の併用による特異能動免疫療法は腫瘍切除後宿主の腫瘍特異的細胞障害活性を増強し、転移、再発の抑制に有効であった。(2)この特異免疫療法は腫瘍切除の影響に対し抵抗性を示す低免疫原性腫瘍に対してもその転移、局所再発の増殖を抑制した。(3)しかしながら、可溶性腫瘍抗原とサイクロフォスファマイドによる特異免疫療法のみでは、その抗腫瘍効果には限界がみられた。(4)特異免疫療法にマクロファ-ジ活性化をもたらすMTP、種々のインタ-ロイキンのうちILー4とILー6、in vitroで誘導したCTLの移入などの第3の治療を付加することで強い転移抑制活性が誘導された。以上の結果をもとに、特異的あるいは非特異的免疫療法の最も効果的な組み合せと、ヒト癌に対しても応用可能か検討を進めている。
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[Publications] 小林 雅夫: "メチルコラントレン誘発肉腫に対する腫瘍特異的細胞障害性T細胞クロ-ンの誘導" 京都府立医科大学雑誌. 99. 515-524 (1990)
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[Publications] 内藤 和世: "細胞障害性T細胞のIn vitro増殖と可溶性自家癌抗原による制御" BIOTHERAPY. 4. 448-451 (1990)
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[Publications] 内藤 和世: "特異免疫療法による腫瘍切除後局所再発防止の実験的研究" BIOTHERAPY. 5. (1991)