1989 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリッド型人工肝をめざした初代培養肝細胞の肝特異遺伝子の発現調節機構の検討
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01570738
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田畑 陽一郎 千葉大学, 医学部, 助手 (30163653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 春幸 千葉大学, 医学部, 助手 (00218588)
平良 眞規 千葉大学, 医学部, 助手 (60150083)
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Keywords | 肝細胞 / 遺伝子発現 / 再生肝 / 初代培養肝細胞 / 肝機能 / c-myc |
Research Abstract |
肝細胞における増殖に伴う遺伝子発現の変化をとらえるため、ラットの再生肝の検討を行った。その結果、癌遺伝子を始めとする5種類の増殖関連遺伝子の発現が一過性に増加しており、またhouse-keeping遺伝子であるβ-actinやphosphorybosylpyrophosphate synthetase subunit I.(PRSI)の発現も肝切除後24時間をピ-クとして増大していた。一方、アルブミンやornithine transcarba-mylase(OTC)等の肝特異機能を代表する遺伝子の発現は、肝細胞の増殖にともなって抑制されていた。初代培養肝細胞においては培養開始後48時間にいたるまで、再生肝と同様に増殖関連遺伝子およびhouse-keeping遺伝子の発現増大と肝特異遺伝子の発現の抑制が認められた。以上の結果より、培養細胞において肝機能が維持できない原因のひとつには、遺伝子発現の段階での抑制が関与していること、およびこの遺伝子発現の変化が細胞の環境が変化したために起こっているなんらかの細胞の増殖機転によることが示唆された。そこで培養細胞の環境をできるだけ生体内に近づけるために培養基質にラット肝より抽出したbiomatrixを用い、培養液の組成を種々変更し検討した。その結果、無血清でEGF,insulinを添加した条件で、最っもよくアルブミン遺伝子の発現が保たれることが明らかとなった。しかしOTC遺伝子の発現はどの様な条件下においても著明に抑制されたままであった。さらに増殖関連遺伝子の一つであるc-mycの著明な発現増大が、上記のいずれの条件下でも高レベルに保たれていた。c-mycは細胞増殖のG_1期に発現誘導されることが知られており、従って今回検討した培養条件では肝細胞は完全に増殖の静止期(G_0期)にはないことが考えられた。そこで今後はc-mycの発現が低レベルになる様な培養条件を見い出すことが、OTC等の肝特異機能が維持されている培養系を確立する上で重要であると思われた。
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[Publications] Y Ito,H Hayashi,M Taira,M Tatibana,Y Tabata,K Isono: "Depression of liver specific gene expression in regenerating rat liver as a putative cause for liver dysfunction after hepatectomy" Journal of Surgical Research.