1990 Fiscal Year Annual Research Report
癌疾患由来異常フィブロネクチンの構造と機能および転移との関連について
Project/Area Number |
01570769
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Research Institution | Toho University School of Medicine |
Principal Investigator |
高塚 純 東邦大学, 医学部・外科学第2講座, 講師 (30139026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋武 博之 東邦大学, 医学部・分子生物学研究室, 助教授 (40010110)
竹内 節夫 東邦大学, 医学部・外科学第2講座, 教授 (20057459)
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Keywords | 消化器癌 / フィブロネクチン(FN) / 尿中フィブロネクチンフラグメント / 細胞接着ドメイン / 免疫組織染色 / 転移 |
Research Abstract |
消化器癌尿中異常FNフラグメントを精製し構造および機能について検討した。胃癌,結腸癌,直腸癌,肝癌などの消化器癌において、良性疾患には認められない分子量10kDaのFNフラグメントが尿中に排泄されていることが判明した。このフラグメンは細胞接着ドメインを中心としたフラグメントでコラ-ゲンに対する親和性は認められないがヘパリンに対して弱い親和性を示し、細胞接着作用をもつドメインIVとヘパリンと親和性のあるドメインVの一部を含んだフラグメントであることもつきとめられた。つぎにこの細胞接着ドメインに対して特異に反応するモノクロ-ナル抗体(MoAb)を用いて免疫組織学的に癌組織を染色し、ポリクロナ-ル抗体による染色と比較検討した。ポリクロナ-ル抗体による染色像は癌組織の間質および基底膜にFNの分布を認めたが、FNのドメインIVのMoAb染色では間質や基底膜に存在しているFNは不連続で不均一性を示したFNのドメインIVの部分の消失が示唆された。すなわち癌組織においては細胞間質や基底膜に存在しているFNの細胞接着部分が癌細胞により切断されたものと考えられた。このことは転移というきわめて特異な性質を有する癌細胞がその細胞を固定し錨として作用しているFNの細胞接着ドメインを切断することにより錨をはずし体のあちこちに転移をきたすという可能性が考えられた。事実転移をきたした癌では尿中FNフラグメントが著明に増加することが認められており、錨がはずされた結果と思われた。この尿中細胞接着ドメイン・フラグメントがFNのどこの位置で切断されているかつついて、N未端側のペプチド構造の解明を試みたがはっきりした結果が得られなかった。今後さらに検討を行ない転移メカニズムの解明を行ないたいと考えている。
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[Publications] 岡本 康介 ほか: "担癌患者尿中フィブロネクチン(uFN)の腫瘍マ-カ-としての有用性" 腫瘍マ-カ-. 5. 163-165 (1990)
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[Publications] 竹内 節夫,高塚 純: "腫瘍マ-カ-としての尿中フィブロネクチン・フラグメント測定の意義" 外科治療. 63. 228-229 (1990)
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[Publications] 高塚 純 ほか: "癌疾患由来尿中フィブロネクチン・フラグメントの検討" 腫瘍マ-カ-. 6. (1991)
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[Publications] 高塚 純: "腫瘍マ-カ-としてのフィブロネクチン" 日本血栓止血学会誌. (1991)