1989 Fiscal Year Annual Research Report
遅発性神経細胞壊死におけるアラキドン酸カスケ-ドの役割
Project/Area Number |
01570802
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中込 忠好 東京大学, 医学部(病)脳神経外科, 助手 (90198052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 富男 東京大学, 医学部(病)脳神経外科, 講師 (10134561)
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Keywords | プロスタグランディン / 脳虚血 / 砂ネズミ / インドメタシン / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
脳虚血中にアラキドン酸を含む不飽和脂肪酸が大量に遊離し、再開通後に、サイクロオキシゲナ-ゼやリポキシゲナ-ゼの作用によりプロスタグランディン(PG)やロイコトルエンが増加することはよく知られている。しかし、虚血・再開通後に増加するこれらの物質の局在は明らかでなかった。そこで、我々は、砂ネズミ両側総頸動脈結紮モデルを用いて、再開通後に増加するPGF_2αとPGE_2の局在を、免疫組織化学的手法にて検討した。その結果は、正常例では血管(脳内および脳表)壁のみに、これらPGの染色がわずかに認められた。全く染色されないものも存在した。5分虚血、5分再開通を行った動物では、血管・グリア細胞それにニュ-ロン(とくに海馬の錐体細胞)で著明な染色性の増加をみた。これらの染色は、動物に虚血前にインドメタシン(10mg/kgi.p.)を投与すると、著明に減弱した。ついで、この染色のTime-courseをPGF_2の局在を調べることで検討した。再開通5分後著明に増加した染色性は、30分後でも、程度は軽度であるが認められたが、2時間後には消失した。この結果は、虚血・再開通によるPGの増加は一過性であることを示している。 砂ネズミにおいて、一過性の前脳虚血により遅発性神経細胞壊死がおきるが、一過性の虚血負荷により海馬の錐体細胞に特にPGの産生が増加する上記の実験結果は、海馬細胞における神経細胞壊死とPGの増加の間に何らかの関連があることを示唆する。そこで、インドメタシンの遅発性神経細胞壊死に対する効果を検討した。虚血30分前に腹腔内投与することで、インドメタシン(1,2,5,10mg/kg)は、海馬CA_1領域の遅発性神経細胞壊死は有意に抑制された。
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[Publications] 佐々木富男,中込忠好,桐野高明,田村晃,野口信,斉藤勇,高倉公明: "インドメタシンによる海馬CA_1遅発性神経壊死の抑止" 医学のあゆみ. 145. 189-190 (1988)
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[Publications] 中込忠好,佐々木富男,小川寿幸,野口信,斉藤勇,高倉公明: "前脳虚血、再開通後に増加するprostaglandin F_2αの局在" 医学のあゆみ. 146. 533-534 (1988)
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[Publications] 佐々木富男,小川寿幸,中込忠好,Kassell NF,高倉公明: "脳虚血とプロスタグランディン産生" 現代医療. 20. 125-130 (1988)
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[Publications] Sasaki T,Nakagomi T,Kirino T,Tamura A,Noguchi M,Saito I,Takakura K: "Indomethacin ameliorates ischemic neuronal damage in the gerbil hippocampal CA,sector" Storoke. 19. 1399-1403 (1988)