1990 Fiscal Year Annual Research Report
髄芽腫の腫瘍化および増殖メカニズムの解析と治療方法の検討
Project/Area Number |
01570809
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 恵司 大阪大学, 医学部, 助手 (50162699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 徹 大阪大学, 医学部, 教授 (20135700)
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Keywords | 髄芽腫 / 脳腫瘍 / 主要組織適合抗原複合体 / 免疫療法 / モノクロ-ナル抗体 / LAK細胞 / インタ-フェロン |
Research Abstract |
髄芽腫は、小児に発生する悪性脳腫瘍の13ー15%を占め、病態の早期より髄腔内播種をきたしやすく、その根治はきわめて困難であるとされてきた。この腫瘍は、成人に一番多く発生する悪性度の高いグリオブラスト-マに比して、細胞株として樹立された症例は極めて少なく、世界中で数種類しか樹立されていない。我が教室では,2歳と9歳の女児患者より、2種類の細胞株(ONSー76とONSー81)を樹立し、その生物学的特徴についてすでに報告している(Cancer Res,脳と神経)。今年度は、これら細胞の増殖メカニズムや各種増殖因子、各レセプタ-等について検索を進めると共に、ONSー76細胞に対するマウスモノクロ-ナル抗体の作製や、ヌ-ドマウスを用いた髄腔内播種モデルの作製を試みた。その結果、これら2種類の細胞株は、無血清(D/F)培地内で増殖し、インシュリン、トランスフェリン、上皮成長因子(EGF)に対するレセプタ-が陽性であった。しかし、これらの増殖因子を無血清培地に添加しても、増殖速度に変化が認められず、autocrinやparacrineのメカニズムが関与しているかどうか現在解明中である。また、cーSrcやNーmyc等の癌遺伝子産物が陽性であり、現在地の癌遺伝子についても検索中である。ONSー76細胞を用いた髄腔内播種モデルの作製に成功しており(Neurol Med Chir)、今後in vivoの病態生理について研究する予定である。髄芽腫に対するマウスモノクロ-ナル抗体については、その性状と抗原認識部位の同定を行なっている(神経免疫研究)。更に、この抗体を用いて、グリアとニュ-ロンの分化について研究を進めると共に、髄芽腫の大きな特徴である髄腔内播種について早期診断に応用する予定である。今後、髄腔内播種をきたした髄芽腫患者に対して行なってきた養子免疫療法(Cancer Immunol Immunother、脳と神経)の補助療法として、臨床応用の可能性について検討を行なう予定である。
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Research Products
(24 results)
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[Publications] Tamura,Kazuyoshi: "Detection of Major Histocompatibility Complex on Human Medulloblastoma Cells" Cancer Res. 49. 5380-5384 (1989)
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[Publications] Okamoto,Yutaka: "Interleukin 2 recepter beta chain expressed in an oligodendroglioma line binds interleukin 2 and delivers growth signal" Proc Natl Acad Sci USA. 87. 6584-6588 (1990)
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[Publications] Shimizu,Keiji: "A high Density Cell Culture System for Generation of Human Lymphokineーactivated Killer (LAK) Cells for Clinical Use in Adoptive Immunotherapy" J Clin Lab Immunol.
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[Publications] Yamada,Masanobu: "Murine models of leptomeningeal dissemination using human Medulloblastoma cells" Neurol Med Chir (Tokyo).
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[Publications] Shimizu,Keiji: "Establishment of two human medulloblastoma cell lines" Brain Tumor Pathology. 8. (1991)
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[Publications] Shimizu,Keiji: "An adoptive immunotherapy for malignant brain tumor patients involving massive transfer of lymphokineーactivated killer cells" Cancer Immunol Immunother.
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[Publications] 山田 正信: "髄芽腫細胞株の樹立とその生物学的検索" 脳と神経. 41. 695-702 (1989)
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[Publications] 朴 啓彰: "濃縮回転培養システムによるLAK細胞の大量培養とその臨床応用" 日本癌治療学会誌. 24. 2349-2354 (1989)
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[Publications] 清水 恵司: "脳腫瘍患者に対するC.Rーtissueシステムを用いた養子免疫療法" Biotherapy. 3. 108-112 (1989)
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[Publications] 田村 和義: "IFN_γによる髄芽腫細胞のHLAーDR抗原の誘導" Biotherapy. 3. 210-213 (1989)
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[Publications] 朴 啓彰: "髄芽腫患者3例に対するLAK細胞を用いた養子免疫療法" 小児の脳神経. 14. 387-392 (1989)
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[Publications] 清水 恵司: "髄芽腫患者に対する養子免疫療法" 脳と神経. 41. 991-995 (1989)
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[Publications] 山田 正信: "樹立細胞株を用いたPNET及び髄芽腫の生物学的比較検討" 神経免疫研究. 2. 137-142 (1989)
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[Publications] 清水 恵司: "脳腫瘍患者に対する養子免疫療法の長期追跡結果" Biotherapy. 4. 478-482 (1990)
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[Publications] 馬淵 英一郎: "ヒト髄芽腫細胞に対するIFN_βの単独および併用療法の検討" Biotherapy. 4. 1079-1084 (1990)
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[Publications] 清水 恵司: "髄腔内播腫を伴った髄芽腫患者に対する養子免疫療法" 小児がん. 27. 440-443 (1990)
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[Publications] 清水 恵司: "ヒト髄芽腫細胞株:ONSー76,ー81" Human Cell. 3. 265-266 (1990)
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[Publications] 清水 恵司: "脳腫瘍患者に対するLAK療法の治療結果と展望" 日本輸血学会誌. 36. 806-809 (1990)
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[Publications] 田村 和義: "ヒト髄芽腫培養細胞の主要組織適合抗原の検索" Neurol Med Chir (Tokyo). 30. 796-799 (1990)
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[Publications] 朴 啓彰: "髄芽腫細胞株(ONSー76)に対するモノクロ-ナル抗体の作製と解析" 神経免疫研究. 3. 109-113 (1990)
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[Publications] 岡本 裕: "ヒトオリゴデンドログリオ-マ細胞株におけるILー2シグナル伝達について" 神経免疫研究. 3. 172-176 (1990)
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[Publications] 馬淵 英一郎: "ヒト悪性脳腫瘍に対するin vitro感受性試験" 癌と化学療法. 18. 233-238 (1991)
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[Publications] Shimizu,Keiji: "Proceedings of the 8th Nikko Brain Tumor Conference" Elsevier,
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[Publications] 清水 恵司: "癌の養子免疫療法" オンコロジア社, 99 (1990)