1989 Fiscal Year Annual Research Report
脳腫瘍とメラトニンに関する基礎的ならびに臨床的研究
Project/Area Number |
01570816
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
栗坂 昌宏 高知医科大学, 医学部, 助教授 (30096804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 雅徳 高知医科大学, 医学部, 助手 (00145153)
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Keywords | 松果体腫瘍 / 胚芽腫 / 松果体細胞腫 / 松果体 / メラトニン / 水頭症 / 髄液 |
Research Abstract |
松果体部、視交叉部腫瘍その他の脳腫瘍患者に合併した水頭症および腫瘍以外の水頭症例に脳室-腹腔シャント術を施工する際に採取した脳室液中におけるメラトニン値を、高速液体クロマトグラフィ-とクロロフォルム抽出法の組み合わせで測定した。測定はいずれの症例も午前10時前後に採取した髄液を用いて行った。髄液中メラトニン値は、年令が15才未満の症例で高値を示し、20才を越える症例では基礎疾患の種類の如何に拘わらずいずれの症例も低値を示した。15才未満の症例の中では、松果体部に発生した卵黄のう膜腫、松果体芽細胞腫、類上皮腫、悪性星細胞腫例で著しい高値を示し、非腫瘍例の中では髄膜炎後水頭症例で高値が得られた。視交叉部胚芽腫例では1例にのみメラトニン値の上昇が認められたが、この症例は髄膜炎および脳室炎を合併した症例であった。この様な結果は、炎症や非松果体細胞由来の松果体芽細胞腫においては、腫瘍細胞そのものからのメラトニン産生を促進させる可能性を示唆しているものと考察される。また、松果体細胞由来の松果体芽細胞腫においては、腫瘍細胞そのものからのメラトニン産生が推測された。このため、メラトニンに対するモノクロ-ナル抗体を用いて、酵素抗体間接法による免疫染色で、腫瘍におけるメラトニンの産生能を検討した。手術又は剖検によって得た、小児および成人松果体組織ならびに松果体細胞腫、松果体芽細胞腫、悪性星細胞腫、類上皮腫、卵黄のう膜腫についてパラフィン切片を作成して検索した。正常ヒト松果体においては、小児例でメラトニン陽性細胞が多く、成人では少なかった。腫瘍についてみると、松果体芽細胞腫でメラトニン陽性細胞が最も多く、松果体細胞腫が次に多かったが、悪性星細胞腫、類上皮腫、卵黄のう膜腫にはメラトニンの局在が証明されなかった。従って、後三者においては腫瘍が正常松果体を刺激してメラトニンを産生しているものと考えられる。
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[Publications] 栗坂昌宏: "The melatonin value in the cerebrospinal fluid of the hyd、ocephalic patients" Neurologia-Medico-Chirurgica.
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[Publications] 栗坂昌宏: "Immunohistochemical study of melatonin in the pineal cell tumors and germ cell tumors" Journal of Neurosurgery.