1991 Fiscal Year Annual Research Report
水頭症における脳室周囲組織の髄液循環及び血液循環についてー短絡術の有効性
Project/Area Number |
01570821
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
佐藤 修 東海大学, 医学部, 教授 (00023763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹井 太 東海大学, 医学部, 助手 (00216839)
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Keywords | 水頭症 / 脳水分含有量 / 短陸術 / gliosis / 上衣細胞下細胞構築 |
Research Abstract |
水頭症の治療法としての髄液短絡術の結果、臨床的には良好な結果を得ているにも拘らず、必らずしも脳室拡大の改善が著しいことはいえないことがある。また脳室は縮少しても脳床上著効といえないこともある。 今回は猫にカオリン大槽内注入法により水頭症を発症せしめ、脳室一胸腔短絡術を行ったときの形態学的変化、また髄液動態の変化の一部を観察するため、側脳室壁周囲組織につき検討を加えた。 なお当初計画した同組織の血液循環動態について検索し得なかった。 〔結果〕 短絡術の効果につき、平成3年度は主として観察を行った。体重3〜5kgの成猫26頭のうち、短絡術有効群とみられたのは9頭、また無効群と判定されたものは7頭で、これらにつき短絡術を施行しなかった6頭を対照群として比較検討した。 なお水頭症作製にあたっては、数蓋骨を両側ともに広汎に切除したものの硬膜は切除せずそのままとした。 しかし過去において行った硬膜除去群についての実験結果をも参考に加えた。 短絡術施行前の水頭症猫では脳室壁上衣層直下では乾燥重量法で測定した水分量は72、2±1、0%と著しい増加をみたが、それより深部の白質水分量は67.2±0.7%と正常値に比べ著変はなかった。 しかし短絡術有効群においては壁直下の水分量は70.9±1.1%と、正常対照群に高い値を示したのに対し、短絡術無効群では減少は予想通り観察されなかった。 しかしさらに興味深いのは無効例において、深部白質の水分量が70.3±1.3%と増加を示したことである。電顕像ではこの部に細胞外腔の拡大、ミエリン,アクソンの損傷はさほど著明でなく興味深く思われた。本年度の成果より、髄液吸収の側副路と考えられる脳室壁周囲組織の変化が短絡剤前後、またその成否により明確に示され、短絡術の早期施行の重要性が再認された。
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