1991 Fiscal Year Annual Research Report
熱傷ショック期の病態に関する研究ー形態学的および生化学的解析ー
Project/Area Number |
01570864
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大谷 美奈子 広島大学, 医学部附属病院, 助教授 (10033995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 博毅 広島大学, 医療技術短期大学部・創設準備室, 教授 (20034184)
岡林 清司 広島大学, 医学部・附属病院, 講師 (50127627)
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Keywords | 熱傷ショック / 脾臓白脾髄 / リンパ濾胞 / 濾胞辺縁帯 / 細胞壊死 |
Research Abstract |
広範囲重症熱傷ショック期におこる病態は、全身各臓器に対する直接的な影響とその結果招来される血管透過性亢進による循環血液量減少および細網内皮系の機能低下であるとされている。 我々は、ラットの下半身に50%のIII度全層熱傷を作成することにより、肝臓のクッパ-細胞が熱傷ショック期において果たす役割について検討を行なってきた。その結果クッパ-細胞を主とした細胞P」皮系がブッロクされていること、マクロファ-ジの機能低下の可能性を示した。 今回は、熱傷モデルラットの脾臓白脾髄の形態学的変化について検討した。 30%III度全層熱傷を作成し,経時的に脾臓を摘出し、光学顕微鏡、透過電子顕微鏡により観察検討した。熱傷後1時間では、すでに胚中心細胞の変性壊死が見られ、細胞崩壊に基づくtingible bodyや、それらを貧食したtigible body macrophageが認められた。熱傷2時間では、リンパ濾胞辺縁帯で細胞の変性壊死が始まるが、リンパ濾胞には変性壊死の所見は見られない。質傷5時間では、胚中心にtingible body macrophageが非常に著明となり、リンパ濾胞においても細胞の変性壊死が始まっていた。 電顕像では、胚中心細胞の水腫様変性や壊死細胞を貧食したmacrophageが認められた。熱傷後12時間では、リンパ濾胞内でもtingible body macrophageが非常に著明となっており、濾胞辺縁帯では細胞の脱落減少が進み、血液の充満像が認められた。 熱傷ショック時の変化は、まず分裂増殖の激しい胚中心細胞より始まり、次に血管に富む濾胞辺縁帯、最後に血管が疎なリンパ濾胞に細胞壊死がおこると考えられた。 このことから、白脾髄内細胞の変性壊死には、循環障害によるanoxiaだけでなく、血中に遊出した細胞障害物質も関与している可能性が示唆された。
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