1991 Fiscal Year Annual Research Report
全身麻酔中における換気・血流比(VA/Q)分布変動に及ぼす因子の解明に関する研究
Project/Area Number |
01570871
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Research Institution | Wakayama Medical Collage |
Principal Investigator |
瀬戸山 緑 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (20206650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 脩 和歌山労災病院, 麻酔科, 部長 (10073800)
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Keywords | 肺換気血流比分布 / 機能的残気量 / 全身麻酔 / 開腹術 |
Research Abstract |
呼吸循環系に異常のない成人開腹手術症例において、開腹前、開腹中、呼気終末陽圧換気(PEEP)付加時、PEEP解徐後の各時点にて機能的残気量(FRC)を、閉鎖回路での窒素希釈法により測定した。開腹によりFRCは、予測していたのと異なり有意に増加した。開腹によってFRCが増加する機序については、腹腔内臓器が胸腔を頭側へ押し上げるTransーdiaphragma pressureが解放されるためと考えられる。また、つり上げ式開腹鈎が用いられると、肋骨弓がより外側上方へ持ち上げられ、弛緩した横隔膜が相対的に尾側に下がるため、胸郭の形態が吸気位に偏位して安静呼気位における肺容量が増加するためと考えられた。また、この影響は腹腔内手術操作によって横隔膜を腹腔側から圧排してもなお相殺されるものと思われた。しかし動脈血酸素分圧(PaO_2)は、必ずしもFRCの増加によって上昇せず、一定の傾向を認めなかった。FRCは肺容量のなかでも特にPaO_2との関係が深く、急性呼吸不全におけるPEEPの効果もFRCを増加させることによる。しかし、今回のようにFRCが増加してもPaO_2の上昇に結びつかないことが多い。これはFRCがclosing volumeよりも低下していると、FRCの増加することがPaO_2の改善に大きく寄与すると考えられるが、肺換気血流比不均等分布や肺内シャント等がPaO_2の低下を来す原因である場合、FRCのみが増加しても肺全体のガス交換の結果としてのPaO_2には影響が少ないためと思われる。これを確かめるために肺換気血流比分布をFRCと同時に測定しているが、症例数が少ないため統計学的検討をするに至っていない。
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