1991 Fiscal Year Annual Research Report
成人T細胞白血病ウイルスキャリア妊婦より出生した児の栄養法に関する検討
Project/Area Number |
01570938
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
沖 利貴 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (30107867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 博文 鹿児島大学, 医学部, 研究生
吉永 光裕 鹿児島大学, 医学部附属病院, 助手 (00221672)
川上 清 鹿児島大学, 医学部附属病院, 講師 (50152921)
園田 俊郎 鹿児島大学, 医学部, 教授 (40036463)
永田 行博 鹿児島大学, 医学部, 教授 (30038806)
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Keywords | HTLVーI母児感染 / 児栄養法 / 母乳摂取期間 / PCR法 / 非母乳性感染 |
Research Abstract |
南九州地域におけるHTLVーI母児感染サ-ベイランス成績(1987.7.1〜1991.6.30)について報告する。 この期間にHTLVーI抗体スクリ-ニングを受けた妊婦数は16,283名で、最終的に885名がキャリアと確定された。キャリア妊婦より出生しフォロ-アップ中の児に総数は638名で、1年以上経過している症例は、人工栄養哺育児177名、母乳哺育児30名で、そのうち26名が母乳摂取期間が平均2.5カ月の臨期母乳哺育児である。抗体陽転率は人工栄養哺育児では5.6%(10/177)、母乳哺育児では6.6%(2/30)であった。さらに短期母乳哺育児の抗体陽転率は3.8%(1/26)で、長期母乳哺育児での抗体陽転率25.0%(1/4)に比べて低い傾向にあった。また人工栄養哺育児でも抗体陽転したことは、非母乳性HTLVーI感染が存在することを示唆している。これに関してはPCR法により、キャリア妊婦より出生した児の臍帯血リンパ球中のHTLVーIウイルスゲノムを検索し興味ある結果を得ている。今回検討した臍帯血48例中3例にHTLVーIウイルスゲノムを検出し、その検出率は6.3%であった。しかしPCR陽性であった3例中追跡できた2例は人工栄養哺育であったが、その後いずれも陰性化し抗体価の再上昇も認めていない。 これらのことから以下のことが明らかとなった。 (1)短期母乳哺育児は長期母乳哺育児に比べて、感染リスクが低い傾向にあった。さらに短期母尼哺育児の抗体陽転率3.8%と人工栄養哺育児の抗体陽転率5.6%には差がみられず、両者の感染リスクはあまり変わらない可能性が考えられる。 (2)人工栄養児においても抗体陽転例が6%程度認められた。このことより非母乳制感染の存在は明らかである。またPCR法による臍帯血リンパ球中のHTLVーIウイルスゲノムの検索のから、非母乳性感染は経胎盤感染のみでは説明がつかず、他の感染経路も示唆される。
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Research Products
(19 results)
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[Publications] 沖 利貴: "HTLVーI母児感染における児栄養法別の感染リスクについての臨床的検討" 日産婦誌. 43Suppl.295 (1991)
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[Publications] 吉永 光裕: "HTLVーIキャリア妊婦末梢血リンパ球のHTLVーI増殖性とp40^<tax>抗体価からみた児への感染性についての検討" 日産婦誌. 43Suppl.295 (1991)
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[Publications] 吉永 光裕: "HTLVーIキャリア妊婦における母乳中リンパ球のHTLVーI増殖性と児へのHTLVーI感染性について" HTLVーI母児感染研究論文集. 3. 61-65 (1991)
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[Publications] 中園 伸一: "HTLVーI抗体価の再上昇を認めた人工乳栄養児の5例" HTLVーI母児感染研究論文集. 3. 70-73 (1991)
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[Publications] 永田 行博: "妊婦スクリ-ニングとその評価ーHTLVーIー" 産婦人科の実際. 40(7). 961-968 (1991)
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[Publications] 永田 行博: "妊婦のATLA陽性" 臨床婦人科産科. 45(9). 1070-1071 (1991)
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[Publications] 園田 俊郎: "南九州におけるHTLVーIの母子感染の実態調査(1986ー1990)(経母乳HTLVーI感染の移行抗体による防御)" 成人T細胞白血病(ATL)の母子感染防止に関する研究班平成2年度研究報告書. 25-28 (1991)
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[Publications] 永田 行博: "HTLVーIキャリア妊婦末梢血リンパ球のHTLVーI抗原発現率とp40^<tax>抗体価によるハイリスクキャリア妊婦選択に関する検討" 成人T細胞白血病(ATL)の母子感染防止に関する研究班平成2年度研究報告書. 82-86 (1991)
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[Publications] 大塚 博文: "HTLVーIキャリア母から出生した児の臍帯血リンパ球中のHTLVーIプロウイルスゲノムの検索" 産婦人科DNAプロ-ブ研究会抄録集. 19. (1991)
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[Publications] Kazuo TAKAHASHI: "Inhibitory effect of maternal antibody on motherーtoーchild transmission on human Tーlymphotropic virus type I" Int.J.Cancer. 49. 673-677 (1991)
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[Publications] Toshitaka OKI: "Clinical study on risk of mother to child transmission of HTLVーI by the mode of feeding" Acta Obst Gynaec Jpn. 43(8). 1061 (1991)
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[Publications] Mitsuhiro YOSHINAGA: "HTLVーI growt in cultual PBL and p40^<tax> antibody titer in the serum as markers for the infectivity of HTLVーI to infants born by carrier mothers" Acta Obst Gynaec Jpn. 43(8). 1061 (1991)
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[Publications] 永田 行博: "HTLVーI母児感染における児栄養法別の感染リスクについて" 鹿児島県医師会報. 6. 8-10 (1991)
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[Publications] Toshitaka OKI: "Clinical study on mother to child transmission of HTLVーI" Journal of Perinatal Medicine. 119Suppl(2). 159 (1991)
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[Publications] Mitsuhiro YOSHINAGA: "HTLVーI growth and p40^<tax> antibody as markers for motherーtoーchild transmission" Journal of Perinatal Medicine. 119Suppl.(2). 160 (1991)
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[Publications] Mitsuhiro YOSHINAGA: "Factーfinding survey of vertical HTLVーI infection in Kagoshima Prefecture(1986ー1990)" The Journal of Japan Society for Cance Therapy. 26(2). 409 (1991)
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[Publications] Toshitaka OKI: "A seroーepidemiological study on motherーtoーchild transmission of HTLVーI in southern Kyushu,Japan" AsiaーOceania J.Obstet.Qynaecol.
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[Publications] 永田 行博: "HTLVーIの母児感染とその予防" 産婦人科の実際. 41(4). (1992)
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[Publications] 大塚 博文: "PCR法を用いたHTLVーI母児感染における胎内感染の検討" HTLVーI母児感染研究論関集. 4.