1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01570951
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 壽一 京都大学, 医学部・耳鼻咽喉科学, 講師 (90176339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 一 京都大学, 医学部・耳鼻咽喉科学, 助手 (50198230)
川野 道夫 京都大学, 医学部・耳鼻咽喉科学, 助手 (40109012)
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Keywords | 人工内耳 / 聾 / 聴覚中枢 / 蝸牛 / リハビリテ-ション |
Research Abstract |
人工内耳は聾者に対し、音刺激を電気刺激に変換し、聴覚を再獲得せしめようとするものであり、欧米ではすでに広く臨床応用されている。しかし機能廃絶した内耳から電気信号がどのように脳内に送り込まれるのか、又実際人工内耳を使用している患者の音成、満足度などはどのようなものであるかなどこれから解明されなくてはならない課題も多い。本研究では、人工内耳埋め込み手術を施行した症例の術後のリハビリテ-ションを通じて、電気信号がどのように音成として得られ、言語として認識されて行くかなどを調査し、更に動物実験を通じ、電気信号の聴覚経路への伝達の仕方などを研究した。本年度の結果としては、現在の人工内耳では母音の弁別は可能であるが、子音の弁別は不十分であり、装置の改良が必要であると考えられた。蝸牛が機能的に廃絶し、基底膜の振動による進行波が生じない状態でも、蝸牛神経を含め、更に上位の聴覚中枢に周波数の特異性があり、電気信号でも、音信号と類似した処理が聴覚路にて可能である事が判明した。一方人工内耳から中枢に送り込まれる信号は正常な蝸牛からの信号にくらべ、非常に単純なものにもかかわらず、人工内耳埋め込み患者は、手術後2〜3ヶ月経過すると単純な会話の聴取が可能になり、手術後6ヶ月位経過すると更に複雑な言語理解が可能となる。これは上位聴覚中枢の働きが大であると考えられる。即ち、一度中枢神経に言語理解の回路が組み込まれると、それが一担廃絶しても、再び単純な信号を与える事により、休止していた回路が活動を再開し、言語として認識していくものと思われる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 伊藤壽一: "人工内耳の段階手術" 耳鼻臨床. 82. 1239-1241 (1989)
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[Publications] 伊藤壽一: "人工内耳手術における問題点とその対策" 耳鼻臨床. 83. 373-376 (1990)
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[Publications] 辻純: "人工内耳におけるpromontory testの問題点" 耳鼻臨床. 82. 353-356 (1989)
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[Publications] 伊藤壽一: "多チャンネル人工内耳における語音の認知" 日耳鼻. (1990)
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[Publications] 伊藤壽一: "人工内耳の原理と適応" 耳鼻咽喉科・頭頚部外科. (1990)
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[Publications] 伊藤壽一: "人工内耳患者の聴覚領野や活動" 耳鼻臨床. (1990)