1990 Fiscal Year Annual Research Report
α_1ーアドレナリン拮抗剤の眼圧下降作用とその臨床応用
Project/Area Number |
01570976
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桑山 泰明 大阪大学, 医学部, 助手 (70186568)
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Keywords | グナゾシン / α_1遮断剤 / 眼圧 / 房水動態 / 家兎 / ヒト / 緑内障 / 上頸神経節 |
Research Abstract |
これまでの研究により,交感神経α_1受容体に対する選択的遮断剤である塩酸ブナゾシンの点眼は家兎およびヒトの眼圧を下降させることを明らかにし,緑内障治療薬として臨床応用できる可能性が高いことを示した。本年度は塩酸ブナゾシンによる眼圧下降がどのような機序で起こるのかをさらに検討するとともに,塩酸ブナゾシンの眼圧に対する効果が上頸部交感神経節の切除により変化するかどうかを検討した。 1.家兎を用いて,twoーlevel constant pressure法で房水流出率を測定した。塩酸ブナゾシン点眼群の房水流出率はコントロ-ル群と比較して有意な変化を認めなかった。塩酸ブナゾシン点眼により家兎の房水流量が有意に増加するという昨年度のflorophotometryを用いた結果と総合すると,塩酸ブナゾシンによる眼圧下降機序は,房水産生の抑制ではなく房水流出の促進,なかでもuveoscleral outflowの増加であると考えられた。 2.家兎の片側の上頸神経節を切除後2週目と6週目に0.01%塩酸ブナゾシンを片眼に点眼して眼圧を経時的に測定した。術後2週目・6週目とも上頸神経節非切除側にブナゾシンを点眼した場合は対照群と同程度の眼圧下降がえられたのに対して,切除側に点眼した場合は有意な眼圧変化は認められなかった。この結果は,塩酸ブナゾシンによる眼圧下降には交感神経終末からのノルアドレナリン放出が必要なことを意味し,その作用はシナプス後α_1受容体を介した作用であることと考えられた。 昨年度には塩酸ブナゾシンが重篤な副作用なしに正常人の眼圧を下降させることを報告したが,これらの成果は交感神経α_1作用に眼圧下降作用があることを示唆するとともに,塩酸ブナゾシンはこれまでにない眼圧下降機序をもつ新しい緑内障治療薬として臨床応用できる可能性が高いことを示している。
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[Publications] 孫 乃学: "選択的α_1遮断剤塩酸ブナゾシン点眼の家兎眼に対する影響" 大阪大学医学雑誌. 42. 497-503 (1990)
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[Publications] 高木 敬之: "塩酸ブナゾシンのヒト眼圧、および房水動態に及ぼす影響" 日本眼科学会雑誌. 95. (1991)
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[Publications] 孫 乃学: "家兎眼におけるα_1遮断剤塩酸ブナゾシンの眼圧下降機序" 日本眼科学会雑誌.