1991 Fiscal Year Annual Research Report
初期石灰化と多層膜構造物(リン脂質)に関する微細構造学的研究
Project/Area Number |
01571001
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
高橋 常男 神奈川歯科大学, 歯学部, 助教授 (00130922)
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Keywords | 多層膜構造物 / リン脂質 / 脂肪酸 / 骨芽細胞 / 脂肪滴 / 透過型電顕 / 培養 |
Research Abstract |
(1)脂肪滴(TG)の分解産物の一つである長鎖脂肪酸(FA)は,界面下でいわゆるリン脂貭分子(PL)と同様に,ラメラ構造(MLS)を呈すること, (2)FAは酸性条件下(pH6.0)では,油滴状(OD)を呈し,アルカリ性条件下(pH7.0ー9.0)では,MLSを呈し,pHによる異なる相変化を呈する特徴が形態学的所見としてもとらえられた, (3)PLはpHによる相変化を示さず,従って形態学的には広いpH域でMLSを呈することなど,脂肪酸,リン脂貭純品とフリ-ズフラクチャ-法を用いた予備実験から確認された。上記の結果を踏えて,出生前後のICR系マウス頭頂骨を用い,MLS出現について電顕的に検索を行った。 滴出試料が直ちに酸性(pH6.0)に調整された固定液にて処置された場合,LD分解酵素であるhormone sensitive lipaseは作用しがたく,分解産物としてFAが生じることもないため,結果としてMLSは可視されてこない。また,既存のTGはそのまま細胞内ば観察されるはずである。以上の推察に対し,詳細に検索した結果,酸性条件でもMLSが細胞内・外に観察される場合がしばしばあった。前年度の報告にあるように,アルカリ性条件下でのインキュベ-トにより細胞内・外にMLSが多数出現した結果を考え合わせると,pH変化に依存しないMLSが存在することを意味し,pHーdependent MLS(脂肪酸と考えられる)と,pHーindependent MLS(ある種のリン脂貭と考えられる)の存在が示唆された。 いわゆるII型肺胞上皮で合成・分泌される肺サ-ファのタントと比べてその分泌様所見に相遇する頻度はきわめて少なかった。本研究におけるその機能的意義としては,細胞分化のためのエネルギ-源や類骨石灰化のための基貭の供給など考えられるが,推察の域を出ず本研究の中で明確化するまでには至らなかった。現在,in vitro系においてカルチャ-medium中の成分分析などひきつづいて検討中である。
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[Publications] 高橋 常男: "骨形成細胞にみられる多層膜構造物の電顕的観察(1)ーグルタ-ルアルデヒド・タンニン酸併用固定法の応用ー" 日本界面医学会雑誌. 21. 36-45 (1991)
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[Publications] 高橋 常男: "骨形成細胞にみられる多層膜構造物の電顕的観察(2)ーin vitro studyー" 日本界面医学会雑誌. 21. 46-56 (1991)
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[Publications] 高橋 常男: "骨形成細胞にみられる多層膜構造物の電顕的観察(3)ー多層膜(ラメラ)構造物の出現に関する各種化学的固定剤の影響ー" 日本界面医学会雑誌. 22. 1-13 (1992)
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[Publications] 高橋 常男: "骨形成細胞にみられる多層膜構造物の電顕的観察(4)ー多層膜(ラメラ)構造物の出現に関する固定時pHの影響ー" 日本界面医学会雑誌. 22. 14-28 (1992)
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[Publications] 樋田 寿々子: "細胞界面の観察ーラット,プレドニゾロンの影響ー" 日本界面医学会雑誌. 22. 29-37 (1992)
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[Publications] Tsuneo Takahashi: "Demon stration of multilamellar structures in developing parietal bone of fetal mice" J.Structural Biol.
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[Publications] 高橋 常男: "バイオサ-ファクタント" サイエンス・フォ-ラム, 13 (1990)
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[Publications] 高橋 常男: "走査電子顕微鏡" 医学出版センタ-, (1992)