1990 Fiscal Year Annual Research Report
慢性歯周炎型歯肉癌の発生に関する研究ー歯肉ポケット上皮発癌との関連ー
Project/Area Number |
01571100
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
大根 光朝 奥羽大学, 歯学部・口腔外科第2講座, 教授 (00085870)
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Keywords | 慢性歯周炎型歯肉癌 / 接合上皮発癌 / 歯肉ポケット上皮発癌 / ラット口腟癌モデル |
Research Abstract |
慢性歯周炎型歯肉癌(扁平上皮癌)は、慢性歯周炎様の症状を呈し、癌は抜歯は切開を契機として歯肉に発現するまで、その姿を口腟内に見せない。したがってその組織発生は歯肉内緑部の上皮や歯肉ポケット上皮ではないかと仮定され、ラット口腟癌モデルを用いた前年度の研究結果で、歯肉内緑部の接合上皮であることが解明された。今年度はその発育過程を検討し、ヒトの臨床症状と比較した 【実験法方】(1)ラット4NQO歯肉癌について、大割連続切片を作製し、組織学的およびCOMPURER GRAPHICによる三次元解析を行った。(2)手術により切除されたヒト慢性歯周炎型歯肉癌について連続切片を作製し、その組織学的特徴を比較検討した。【結果】(1)ラット4NQO歯肉癌の発育過程:接合上皮から発生した癌は歯根膜を破壊しながら歯根に沿って下方増殖した。癌は歯槽骨を破壊し歯根周囲に潜在癌として存在するようになり、いわゆる浮遊歯の状態を示した。(2)三次元的変化:大割連続切片によりこの発癌過程を三次元的に検索した結果、接合上皮から発生した癌が歯周組織を破壊する過程でロ-ト状に歯肉ポケットを形成していくのが観察された。(3)ヒト慢性歯周炎型歯肉癌:癌の主体はX線で観察された様に顎骨内に歯根を囲むように歯槽突起の存在していた。隣接する歯肉内緑部の上皮には種々の程度の異形成変化が認められた。この状態は4NQO歯肉癌の発生状態と非常に類以しており、この癌が歯肉内緑部の上皮から発生したことを示唆する所見と考えられた。 以上から、ラット4NQO歯肉癌における発生過程の検索からも、ヒトの慢性歯周炎型歯肉癌の組織学的状態からも、特異な臨床症状を特徴とする慢性歯周炎型歯肉の発生部位は歯肉内緑部、とくに接合上皮がであることが示された。
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