1989 Fiscal Year Annual Research Report
リン酸基の電子密度および静電ポテンシャルの精密X線構造解析法による研究
Project/Area Number |
01571190
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
菅原 洋子 理化学研究所, 結晶学研究室, 研究員 (10167455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 徹三 神奈川工科大学, 工業化学工学科, 教授 (60087400)
岩崎 準 理化学研究所, 結晶学研究室, 主任研究員 (20087399)
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Keywords | リン酸基 / 電子密度分布 / 精密X線構造解析 |
Research Abstract |
本課題は、物質代謝、情報伝達の場において重要な機能を果たしているリン酸化合物の機能解析の基礎として、反応基であるとともにその電荷分布を特徴づけているリン酸基の電子密度分布と静電ポテンシャルの特性を明らかにすることを目的とする。二リン酸の一価金属塩として、Na_4P_2O_7、Na_4P_2O_7.10OH_2O、二価金属塩としてMg_2P_2O_7等について結晶化を試みた。水溶液よりNa_4P_2O_7・10H_2O結晶を得、球形整形を加え、X線解析デ-タの測定を行なった。消衰補正を加えた精密化を行い、R値0.034を得た。多極子展開プログラムMOLLYを用い、結晶水分子の電荷は0.0eと仮定して、P_2O_7に注目して単極子解析を行なった結果、有効電荷分布はリン原子が1.47e、エステル結合部の酸素原子が-0.73e、リン酸基部分の酸素原子が-0.98〜-1.16e、またκパラメ-タ-は各々1.07、0.97、0.92という結果を得た。この結果は、既に報告されているリン酸アルミニウムのリン酸グル-プの各原子の有効電荷及びκパラメ-タ-の値とほぼ対応しているが、ホスホリルエタノ-ルアミンのリン酸基部分と比べると電荷のかたよりが大きく、またエステル結合部の酸素原子とリン酸基部の酸素原子の電荷の差の有無等の点で違いがみる。今後これらの点については、結晶水の電荷を0.0eと仮定した事の影響を含めさらに検討を行う予定である。Na_4P_2O_7結晶は溶融法と90°C水溶液からのゆっくりとした蒸発による方法に二通りの方法から得た。本結晶は、六方晶形と報告されているが、単斜晶形の双晶として解析されるべきことが明らかになったので、このことを考慮し、解析を進める予定である。Mg_2P_2O_7等の二価金属塩については、現在、溶融法による結晶化を進めている。
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