1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01571210
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井出 利憲 広島大学, 医学部, 教授 (60012746)
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Keywords | 細胞増殖 / 増殖抑制因子 / 細胞表層分子 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生体内の多くの細胞が増殖能力を有したままで増殖を停止し分化機能を営んでいるしくみを明らかにするために、細胞表面にあって増殖抑制作用をもつ因子を分離精製し、その作用を明らかにすることにある。モデル材料として牛脳を材料として用い、これを機械的にほぐして細胞浮遊液とした後、酵素処理によって細胞表層の分子を緩和に解離させた。細胞を遠心分離して除去した上清を、硫安沈澱、イオン交換クロマト、ゲル濾過、吸着クロマト、高速液クロなどに順次かけて、活性分画を濃縮した。この過程で、活性の検定法として、培養ラット細胞3Y1および培養ハムスタ-細胞BHKに対するタンパク質合成阻害およびDNA合成阻害を指標として用いたが、両活性は必ずしも同一の分画に回収される訳ではなかった。すなわち、細胞表層分子のなかには、タンパク質合成阻害を介して増殖抑制効果を示す成分と、タンパク質合成を介することなく増殖抑制効果を示す成分との、少くとも二種類があることが明らかになった。いずれの成分も化学的にはタンパク質あるいはペプチドであると考えられた。精製過程で最も問題となったのは、活性成分の回収率の不安定性であった。これには主に2つの原因が考えられ、ひとつは活性検定に用いる細胞のフェイズの問題であり、もうひとつは、活性成分分画の初期段階でのプロナ-ゼ処理と有機溶媒処理条件の問題であった。実験条件の微妙な違いが、活性成分回収に大きな影響を与えることが明らかになった。次年度はこの経験を生かし、これら条件を厳密に設定して、充分な量の精製標品を得て、作用機作の解析に進めることを目指したい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 高須賀剛: "A temperature-sensitive cell-cycle mutant of mammalian cells,tsJT16,is defective in a function operating soon after growth stimulation" Cell structure abd Function. 15. 39-45 (1990)
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[Publications] 高須賀剛: "tsJT16,a cell-cycle ts mutant defective in a function operating soon after growth stimulation,fails to induce a primarily activated labile nuclear protein" Cell Structure and Function. 15. 47-52 (1990)
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[Publications] 井出利憲: "細胞周期の遺伝的制御" 蛋白質核酸酵素. 34. 1097-1107 (1989)
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[Publications] 井出利憲: "GO期とその変異" 臨床科学. 25. 1393-1398 (1989)
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[Publications] 井出利憲: "哺乳類細胞の増殖調節" 細胞工学. 別冊5. 72-80 (1989)
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[Publications] 井出利憲: "細胞増殖のしくみ" 共立出版株式会社, 248 (1989)
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[Publications] 井出利憲(分担): "染色体と細胞周期第10章動物細胞における増殖と細胞周期の制御" 丸善, 266( 17) (1989)