1990 Fiscal Year Annual Research Report
中国地方臨海平野の形成における近世鉄穴流し堆積物の意義
Project/Area Number |
01580241
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
貞方 昇 北海道教育大学, 教育学部函館分校, 助教授 (20116594)
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Keywords | 中国地方 / 花崗岩類 / 鉄穴流し / 地形改変 / 沖積平野 / 廃土 / 鉄滓粒 |
Research Abstract |
初年度における弓が浜半島、出雲平野の調査に引き続き、島根県江津平野と、岡山県倉敷・水島平野の調査・分析を行った。江津平野は、江川河口の東西に延びる細長い海岸平野で、とくに西側の平野は、主に浜堤と堤間低地よりなり、砂丘は発達していない。浜堤部分の三ケ所における地表下11mまでの試錐で得た1m毎の堆積物の粒度分析、鉱物組成分析の結果をみると、地表下10m付近までの堆積物は、その下の堆積物よりも、際だって花崗岩類に由来する岩片や鉱物に富み、同時に鑢製鉄の廃棄物である鉄滓粒が、堆積物1万粒中に数粒から数十粒の割合で含まれる。これらの事実は、近世初頭に始まったとされる江川流域の砂鉄採取のための鉄穴流しによる廃土流出が、江津平野の最も新しい時期の発達に大きく影響していることを示す。 一方、高梁川の下流域にあたる倉敷・水島の沖積平野は、近世の干拓によって拡大したとされるが、とくに、近世後半の開発地区において地表下4mまでの堆積物を調べると、深度2mまでの堆積物の粒度が、それ以下の堆積物と比べると粗く、花崗岩類片や石英粒の割合が多い。また、鉄滓粒の存在も確認される。高梁川上流域では、同時期の鉄穴流しによって、2億m^3以上の廃土が出たことが分かっており(貞方・赤木、1988)、これらの流出土砂が、大規模な干拓地形成の下地をなしたとみられる。 以上のように、中国地方各地の沖積平野の、近世における急速な拡大の背景には、中国脊梁山地を中心に盛んに行われた鉄穴流しによる大量の廃土が大きく関与していた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 貞方 昇: "弓ケ浜半島の最新期形成と鉄穴流しによる堆積物" 日本第四紀学会講演要旨集. 19号. 52-53 (1989)
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[Publications] 貞方 昇: "鉄穴流しによる江川流域の地形環境変化" 日本地理学会予稿集. 39号. 4-5 (1991)
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[Publications] 貞方 昇: "弓が浜半島「外浜」浜堤群の形成にみる鉄穴流しによる堆積物の意義" 地理学評論.
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[Publications] 貞方 昇: "「歴史地理ハンドブック」第3章第1節 1.過去の自然環境を探る" 古今書院, 238 (1991)