Research Abstract |
野生型スタフィロコッカルヌクレア-ゼ(SNase)の尿素による巻き戻りとアンフォ-ルディングの速度過程を,ストップトフロ-円二色性(CD)法により、定量的に解析した.その結果,1)1M以下の尿素濃度の天然条件下では,巻き戻りには,緩和時間が,それぞれ,0.4秒,2.2秒,45秒,530秒の少なくとも4つの相がある(pH7.0,4.5℃,0.4M尿素),2)デオキシチミジンー3',5'二燐酸(pdTp)非存在下では,アンフォ-ルディングも二相的であり,6M尿素中での緩和時間は,それぞれ,20秒と140秒である,3)pdTpの添加により,アンフォ-ルディングの速度が低下するとともに,反応が単相となることがわかった. SNaseには6個のプロリン残基があり,プロリンペプチド結合のシス-トランス異性化が反応の速度過程に関与していると考えられる.特に,Lys116ーPro117のペプチド結合は,天然状態でも,シスとトランスの二つの構造をとり得ることが示唆されており,アンフォ-ルディング反応の二相性に関係していると考えられる. 大腸菌プロテア-ゼIIIの発現プラスミドpDR42Sを利用して汎用の分泌発現ベクタ-pDRS113を作製した.pDRS113は,lacーtacプロモ-タの下流にプロテア-ゼIIIのシグナル配列を持つ.前年度作製した組換えプラスミドより,SNase遺伝子を切り出し,pDRS113に挿入して,SNase発現プラスミドを作製した.このプラスミドで形質転換した大腸菌より,培地1l当り10mg以上のSNaseが発現された.オリゴDNAプライマ-を用いて,Pro117をグリシンに変えた変異SNaseを作製し,その巻き戻りとアンフォ-ルディングを野生型のものと比較した.野生型で二相あったアンフォ-ルディング過程が,変異体では単相となり,また,4相あった巻き戻り過程は3相となって,Pro→Gly変異が,SNaseの巻き戻りーアンフォ-ルディングを単純化することがわかった.
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