1989 Fiscal Year Annual Research Report
触雪異常出水の発生メカニズムの解明と予測手法の開発
Project/Area Number |
01601510
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
小池 俊雄 長岡技術科学大学, 工学部, 助教授 (30178173)
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Keywords | 融雪異常出水 / 融雪観測 / 風洞実験 / 顕熱フラックス / 潜熱フラックス |
Research Abstract |
融雪異常出水をもたらす高温・多湿・強風条件下での融雪メカニズムの解明とモデル化を目的として、現地観測並びに室内風洞実験を行った。 現地観測は、7月中旬まで積雪が残り、高温・多湿・強風下での融雪観測の機会が得られ易い、富士山吉田側斜面の五合目(標高2200m)、七合目(2900m)、八合目(3400m)の3地点を対象とした。期間は、1989年4月〜7月で、気象要素はRAMパック式記録計を用いて自記観測し、融雪量は1週間毎の現地調査(積雪断面観測・表面融雪深観測)より、期間融雪量を推定した。その結果、梅雨期の高温・多湿・強風下において融雪を起こす潜熱交換量が激増することが明らかとなった。そこでこの融雪現象の解明とモデル化を目的とする室内風洞実験を行った。 実験は、室温を14℃から30℃に制御できる恒温室内にゲッチンゲン型(回流型)風洞を作製し、風速、温度、湿度を変化させて行った。雪サンプルの雪面が風洞定部底面に合うように置き、融雪による雪面沈下に伴ってジャッキで高さを調節し、そのサンプルの高さの変化に密度を乗じて求めた融雪量と雪面上の気温・水蒸気圧・風速のそれぞれの垂直分布及び放射収支量を計測した。雪面上では、温度、風速の境界層の発達が見られ、これらの境界層厚が発達し切ったと見なせる雪の前端から98cm地点で融雪量の計測を行った。気温・水蒸気圧・風速のうち、1つのみを変化させ他は一定の条件で実験を行った所、融雪強度(単位面積当り単位時間に融ける雪の質量)と雪面からの高さ3cmの温度、水蒸気圧差との関係はいずれも線形であるが、融雪強度と風速との関係は非線形となることが示された。またその非線形性は温度・湿度が高くなるほど顕著であり、従来のバルク法では高温・多湿・強風下での顕熱・潜熱交換量を表現することはできず、風速の非線形性を考慮したモデルの開発が必要であることが示された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 奥村学,浅沼順,小池俊雄,後藤巖,: "風洞実験による触雪現象の解明" 第8回日本自然災害学会学術講演会要旨集. 98-99 (1989)
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[Publications] 小池俊雄,後藤巖,奥村学,浅沼順: "風洞実験による触雪現象の解明(1)" 土木学会第44回年次学術講演会概要集第2部. 94-95 (1989)
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[Publications] 浅沼順,小池俊雄,虫明功臣: "富士山北斜面における触雪観測ー第二報ー" 日本雪氷学会秋季大会講演予稿集. 48 (1989)
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[Publications] 小池俊雄,後藤巖,奥村学: "風洞実験における積雪降温過程の解明" 日本雪氷学会秋季大会講演予稿集. 158 (1989)