1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01604526
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
十倉 好紀 東京大学, 理学部, 助教授 (30143382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
腰原 伸也 東京大学, 理学部, 助手 (10192056)
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Keywords | 光誘起効果 / 電荷移動錯体 / パイエルス歪 / 中性-イオン性転移 / スピン-格子相互作用 / 光励起状態 / 協力現象 / ドメイン注入 |
Research Abstract |
本研究の目的は、レ-ザ-照射等による光刺激によって高速の光学的性質の変化(光誘起効果)を示すことが期待される有機固体について、これらの効果を含む光物性の特徴を明らかにする点にある。昨年度までは分子間または共役主鎖上での電荷移動型遷移を有するフタロシアニン、ポリジアセチレン誘導体を中心に研究を進めてきたが、本年度は励起状態が格子系と強い相互作用を持つ系に対称を拡大し、特にパイエルス歪や、電荷移動量の変化を伴う相転移を示す電荷移動錯体について集中的な研究を行なった。このうち、中性-イオン性相転移を起こす交互積層型電荷移動(CT)錯体Tetrathiafluvalene-p-chloranil(以後TTF-CAと略称)については、パルス及びcw光励起による過度的(ナノ-ミリ秒)な反射率変化、及びその時間・温度依存性を調べ、その微視的機構の詳細な研究を行なった。TTF-CAは、Tc(=81K)を境として低温側ではドナ-(D)・アクセプタ-(A)対が二量体化したイオン性相に、高温側では中性相になっている。このTTF-CAを光照射すると、電荷移動励起によって、中性相(T>Tc)ではイオン性相の部分が、逆にイオン性相(T<Tc)では中性相の部分が注入されることになる。特に中性-イオン性相境界温度Tc付近では、イオン性相と中間相のエネルギ-が縮退しているために、光によって励起された領域が非常に大きく成長し、大きな光誘起反射率変化Tcを示すことが期待される。実際、10%近い大きな△R/Rが、イオン性相(T<Tc)を励起した場合のみ観測され、光励起によって半巨視的なスケ-ルにわたって、価数変化を示すことが明らかになった。この光誘起変化は、基底状態でのパイエルス歪を引き起こしているスピン-格子相互作用が、光励起状態で切断されるために起こる新しい協力現象と見ることができよう。
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[Publications] S.Koshihara,Y.Tokura,K.Takeda.T.Koda and A.Kobayashi: ""Reversible and irreversible thermochromic phase transitions in single crystals of polydiacetylenes substituted with alkyl-urethanes"" J.Chem.Phys.
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[Publications] Y.Tokura,S.Koshihara,Y.Iwasa,H.Okamoto,T.Komatsu,T.Koda,N.Iwasawa and G.Saito: ""Domain-wall dynamics in organic charge-transfer compounds with one-dimensional ferroelectricity"" Phys.Rev.Lett.63. 2405-2408 (1989)
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[Publications] Y.Iwasa,T.Koda,Y.Tokura,S.Koshihara,N.Iwasawa and G.Saito: ""Switching effect in organic charge transfer complex crystals"" Appl.Phys.lett.55. 2111-2113 (1989)
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[Publications] Y.Iwasa,T.Koda,S.Koshihara,Y.Tokura,N.Iwasawa and G.Saito: ""Intrinsic negative resistance effect in mixed-stack charge transfer crystals"" Phys.Rev.B. 39. 10441-10443 (1989)