1989 Fiscal Year Annual Research Report
ニュ-ロコンピュ-タ演算素子としてのリン脂質超薄膜
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01604548
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 研一 名古屋大学, 教養部, 助教授 (80110823)
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Keywords | 興奮現象 / 非線形 / 自励発振 / 人工神経 / 味覚機能 / 単分子膜 / 動的粘弾性 / 自己秩序形成 |
Research Abstract |
本年度は、主として次のような課題についての研究を行った。(1)人工ニュ-ロンとしての安定な複合リン脂質薄膜の作成。(2)リン脂質薄膜の非線形特性と、発振現象の関連についての系統的な研究。(3)非線形発振子の集団が示す、大域的な時空間の秩序構造と、それを利用した情報処理。 上記いずれの課題においても、予想を上回る大きな成果が得られた。以下、研究成果の一部を紹介したい。 油水界面において、リン脂質単分子膜存在下自発的な電位振動を発生させることができることを発見した。電位と界面張力が同期していることも見い出した。このことより、リン脂質の油水界面上の濃度が、周期的に変化し、これが電位振動を引き起こしていることが明らかとなった。界面に於てリン脂質単分子膜の形成・破壊が繰り返されるとして、非線形微分方程式をたてた。この微分方程式を用いることにより、実験で得られた各種の発振パタ-ンを理論的に再現することが可能となった。この油水界面系では、二相間での化学ポテンシャルの差(非平衡性)によって、周期的な張力変動がみられるが、このこと自体重要な事実である。すなわち、化学エネルギ-を、巨視的な力学エネルギ-に変換することができていることになる。実際、界面の巨視的な運動を観察することもできる。 単分子膜の非線形粘弾性挙動についても研究をすすめた。その結果、膜の非線形粘弾性挙動は、味覚物質より特異的に変化していることが明らかとなった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K.Yoshikawa: "“Characteristics Effects of Taste-Compounds on the Dynamic Behavior of Oleate-Monolayer"" Biochem.Biophys.Res.Commum.160. 699-704 (1989)
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[Publications] K.Yoshikawa: "“Amusement with a Salt-Water Oscillator"" J.Chem.Edu.66. 205-206 (1989)
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[Publications] K.Yoshikawa: "“Self-Pulsing at an Oil/Water Interface in the Presence of Phospholipid"" Chem.Phys.Lett.160. 623-626 (1989)
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[Publications] S.Nakata: "“Characteristic Responce to Tase Stimuli of the Intensities of Higher Harmonics in an Electrochemical Oscillatory System"" Biophys.Chem.34. 201-210 (1989)
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[Publications] 中田聡: "“界面における非線形振動"" 物性研究. 51. 621-640 (1989)
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[Publications] 吉川研一: "“細胞膜モデルによる味のセンシング"" 科学. 59. 794-801 (1989)
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[Publications] 吉川研一: "“味覚センサ-"" 冬樹社, 86 (1989)