1989 Fiscal Year Annual Research Report
儒教分化圏における企業者精神と近代化〜張審と渋沢栄一の比較研究〜
Project/Area Number |
01605501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中井 英基 北海道大学, 文学部, 教授 (70068758)
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Keywords | 日中比較 / 企業者精神 / 実業の精神 / 後発工業化 / 儒教的パラダイム / 儒教分化圏 / 朱子学(分化的ナショナリズム) / 中心・正統と周縁・異端 |
Research Abstract |
本研究は、「重点領域研究」の「東アジアの経済的・社会的発展と近代化に関する比較研究」(昭和62年〜平成元年)の公募研究の一環として計画し、実施したものである。本研究の意図は、張謇(1853-1926年)と渋沢栄一(1840-1931年)という近代日中両国の代表的企業家を取り上げ、「企業者史学」の視角から3年計画で両者を比較検討しながら、東アジア儒教分化圏の近代化・工業化における企業者精神=主体的条件を軸とする諸問題を歴史的に解明し、今日における含意を探り出すことにある。 この3年間における研究実績は、裏面のリストに挙げた通りであり、最終年度のそれは*印のものである。張謇と渋沢の両者を軸とする日中比較の作業は、科研費の補助というこの重要な機会を得たおかげで、一応の成果を得ることが出来た。とりわけ次の諸点、(1)ウェ-バ-によれば、西欧での先発工業化においてプロテスタンティズムの倫理のみが「資本主義の精神」を生み出したとされたが、欧米の圧力下における儒教分化圏の後発工業化の場合、儒教思想でも、というより儒教思想だからこそ、「実業の精神」に転化し、工業化の推進力となりえたこと、(2)その実例として近代日本の初期工業化で渋沢が果たした役割を極めて重要なものとして評価しうること、(3)その渋沢と「同時代人」の張謇とを比較した時、両者の違いをもたらした環境・主体両面の要因として、思想上・政治上の「儒教的パラダイム」の転換の有無が注目されること、そしてこの転換は近代国家の建設(明治維新と国民革命)とも密接にかかわっていたこと、等の諸点を確認することができた。しかしながら、張謇と渋沢との比較研究ははまだ端緒についたばかりである。ここで得られた新しい知見を基に、あらためて近代中国における張謇及びその他の企業者を広く検討し直しながら、これらの諸問題を一層深く掘り下げていく必要があると考える。
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[Publications] 中井英基: "「張謇与渋沢栄一」(華文)" 南京大学主催「張謇国際学術検討会」報告論文. (1987)
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[Publications] 中井英基: "「張謇と渋沢栄一日中近代企業者比較論」(1)の邦文改定版" 「一橋論叢」. 第98巻6号. pp.43-58 (1987)
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[Publications] 中井英基: "「儒教分化圏における後発工業化の企業者エ-トスー日中近代企業者比較論のための覚書」" 北海道大学東洋史談話会「史棚」. 第22号. pp.1-18 (1988)
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[Publications] 中井英基: "章開〓著「開拓者の足跡ー張謇伝稿ー」" 「近代中国」. 第21巻. pp.28-37 (1990)
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[Publications] 中井英基: "馬伯煌主編「中国近代経済思想史」(上冊)" 「東方」. 第106号. pp.30-32 (1990)
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[Publications] 中井英基: "張謇を始めとする、清未民国初における中国近代企業家・紳商及び関係の政治家についての伝記研究【○!1】張謇【○!6】徐潤●○11☆許県霖●○16☆程徳全21染県芬【○!2】朱其昴【○!7】唐廷枢●○12☆聶緝〓●○17☆翁同〓●○22☆心湛【○!3】祝大椿【○!8】盛宣懐●○13☆厳信厚●○18☆黄体芳●○23☆季鴻藻【○!4】経元善【○!9】栄宗教●○14☆胡光〓●○19☆黄紹箕●○24☆倭仁【○!5】稷藕生●○10☆栄徳生●○15☆文延式●○20☆黄紹第●○25☆馬良" 霞山会編刊. 「中国近代人名辞典」、東京. (1991)