1989 Fiscal Year Annual Research Report
海洋における沈降粒子の動態とその物質循環における役割に関する研究
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01610006
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
半田 暢彦 名古屋大学, 水圏科学研究所, 教授 (00022559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 義昭 北海道大学, 水産学部, 教授 (10001611)
藤原 祺多夫 広島大学, 総合科学部, 助教授 (90090521)
中山 英一郎 京都大学, 理学部, 助手 (50108982)
石渡 良志 東京都立大学, 理学部, 教授 (90087106)
濱 健夫 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助手 (30156385)
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Keywords | 親生物元素 / 物質循環 / 有機物 / 沈降粒子 / 有機元素フラックス / 日本海溝 / 南極海 / 北西部北太平洋海盆 |
Research Abstract |
深層水における炭素を中心とする親生物元素の循環を明らかにするため、北西部北太平洋海盆、日本海溝及び南極海においてセジメントトランプ実験を実施し、以下の結果を得た。 1)襟裳岬沖に実験海域を設定し、1988年9月から1989年5月までセジメントトラップを設置し、粒子の沈降による有機物の鉛直フラックスを測定した。有機炭素、塩素フラックスは顕著な季節変動を示した。特に、春季と秋季においてフラックスの高い値が観測された。これは、それぞれ春季及び秋季におけるこの海域での植物プランクトンブルームの発生に依るものと判断される。 2)日本海溝及び襟裳岬沖の北西部北太平洋海盆では冬期に有機炭素フラックスが高くなることを認めた。沈降粒子有機物のδ^<13>C及びアミノ酸のラセミ化度の測定結果は、冬期季節風の吹き出しによる大陸棚及び大陸棚斜面の堆積物の捲き上げ、深海底への移動及び再堆積がこのような有機炭素フラックスの増加を引き起こしていることを示唆した。 3)冬期海底近傍を伝って沿岸域から外洋への有機物の輸送は、間欠的に発生する。しかし、有機炭素フラックスの極大が2ー3月に認められることから、何等かの意味で気象擾乱が有機炭素の水平輸送に深くかかわっているものと判断される。 4)南極海における有機炭素フラックスは同海域の12月から翌年の2月にかけて発生する植物プランクトンブルームに依存することを認めた。特に、本海域における一連の沈降粒子有機物のδ^<13>C値に関する結果から植物プランクトンに生物活性の診断に対して、有機物のδ^<13>C値が極めて有効な指標になることを認めた。これらの結果は、沈降粒子試料の有機物組成、特に貯蔵性炭水化物の挙動によっても支持された。また、有機物のδ^<15>N値は海洋表層の栄養塩状態に関する情報を与えることを示した。
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[Publications] N.Handa and H.Sakugawa: "Distribution of glycorylglycerols and oligosaccharides in marine plant materials,and suspended and sinking particles and their ecological significance in the deep sea" Marine Chemistry. 28. (1990)
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[Publications] T.Hama,N.Handa and K.Matsunaga: "Composition of phytoplankton products in Lake Biwa,Japan-Vertical and seasonal changes and their relation to environmental factors" J.Plankton Research. 12. 133-147 (1990)
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[Publications] 半田暢彦: "海洋生物の活動と二酸化炭素収支" 現代化学. 1989. 35-40 (1989)
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[Publications] 半田暢彦: "物質の輪廻ー巨大な化学反応場としての海洋" 学術月報. 41. 821-825 (1989)
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[Publications] 半田暢彦: "海洋の溶存態・縣濁態有機物" 海洋工学コンファレンス論文集. 1. 1-7 (1989)
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[Publications] 増沢敏行,半田暢彦: "重錘打ち込み式コアラーによる相模湾初島沖海底生物群集からの砂質堆積物コアの採取と間隙水の化学組成(「しんかい2000」第380潜航)" 海洋科学技術センター試験研究報告. 23-30 (1989)
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[Publications] 寺本俊彦編: "海と人類の未来" 日本学術振興会, 211P (1990)