1989 Fiscal Year Annual Research Report
ゼニゴケ葉緑体DNA全塩基配列より予測した光化学系の新しい遺伝子産物の単離と同定
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01621505
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大山 莞爾 京都大学, 農学部, 助教授 (40135546)
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Keywords | 葉緑体DNA / ゼニゴケ葉緑体 / Synechocystis / 光合成遺伝子 / 遺伝子タッギング / DNA結合モチ-フ |
Research Abstract |
[目的]光合成に関する分子生物学的研究は、葉緑体DNAの全構造の解明により新たな展開がみられたが、ゼニゴケ葉緑体ゲノムにはこれまでには知られていなかった未確認遺伝子が新たにおよそ30個予測された。これら未知遺伝子の機能解明は、光合成に関する研究上重要と考えられる。そこで本年度は、ゼニゴケ葉緑体ゲノムに見られDNA結合モチ-フを有するタンパク質をコ-ドするDRF316遺伝子と、その存在部位が判明しているが機能の判らないORF55(psbk)遺伝子について取り上げ、葉緑体と似た光合成を行い形質転換可能な藍色細菌Synechocystis PCC6803により機能解明を目指した。[方法](1)S.6803にDRF316、DRF55遺伝子と相同な遺伝子が存在するか明らかにするために、S.6803より単離したDNAの制限酵素BamHl、EcoRI断片に対しサザンハイブリダイゼ-ションを行う。(2)これらの相同遺伝子をS.6803よりクロ-ニングする。(3)クロ-ンの塩基配列を決定し、S.6803における遺伝子構成を明らかにする。[結果]サザンハイブリダイゼ-ションによりORF316、ORF55遺伝子とホモロジ-をもつ遺伝子の存在が認められ、これらの遺伝子を含むクロ-ンを単離した。ORF316に相同性を持つS.6803由来の遺伝子は、塩基配列からアミノ酸326個からなると推定され、ゼニゴケORF316と52%、大腸菌dedB遺伝子と44%の相同性を示した。ゼニゴケORF55に相同性をもつクロ-ンについても、遺伝子の相同性は高いが、近傍の遺伝子の構成は異なることが明らかになった。[考察]葉緑体DNAの未確認遺伝子の機能の解明には葉緑体における形質転換が必要で、現在のところ不可能である。そこで、形質転換可能でしかも光合成を行う藍色細菌S.6803を用いれば、遺伝子タッギングによる機能の解明ができる。今回、S.6803のORF326遺伝子近傍の遺伝子構成を明らかにしたが、葉緑体とは異なり、今後遺伝子タッギングによりS.6803の生物機能の変化を探求することが必要である。
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[Publications] Y.Fujita: "ldentification of a novel nifH-like(frxC)protein in chloroplasts of the liverwort Marchantia polymorpha" Plant Molecular Biology. 13. 551-561 (1989)
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[Publications] H.Ozeki: "The chloroplast genome of plants:a unique origin" Genome. 31. 169-174 (1989)