1989 Fiscal Year Annual Research Report
携帯用会話盤を用いた社会的場面におけるチンパンジ-の言語習得
Project/Area Number |
01626505
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60111986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正高 信男 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (60192746)
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Keywords | チンパンジ- / 障害児教育 / 人工言語 / 見本合わせ / 会話盤 / 手話 |
Research Abstract |
障害児のコミュニケ-ション行動にかんする研究のひとつとして、知能の高いチンパ-ジ-を障害児のモデルとした実験的分析を試みている。チンパ-ジ-の知覚・認知の諸特性はヒトとほとんど変わらず、言語的コミュニケ-ションの乏しい点で、耳や口の不自由な障害児にきわめて近い存在である。 今年度の研究の進捗状況は、現在までのところ以下のとおりである。 1.コミュニケ-ション・ツ-ルとしての携帯用会話盤の製作:小型インテリジェントスイッチ(サン電業社)を主体とした新構想のもとに、従来に類例のない携帯用会話盤の製作をした。画期的なことは、それぞれの押しボタンが小さなビデオタ-ミナルのように多様なシンボルを表示できることだ。タイプライタ-のように位置とシンボルの関係が固定しない。同じ端末が、どんなシンボルでも、どんな位置にでも表示できる。したがって、携帯用の多目的な会話盤として最上のものといえる。 2.チンパンジ-の「言語」訓練。既存のキ-ボ-ド(会話盤)を使って、チンパンジ-に視覚性人工言語を教える試みがおこなわれている。約80語を習得しているメスのチンパンジ-(アイ13歳)に続いて、6-9歳の子どものチンパンジ-4頭を対象として、言語習得の基礎的な訓練がおこなわれている。 3.手話を第1言語とする聾唖者および手話に堪能な健常者の2人を教師として、手話によるチンパンジ-とのコミュニケ-ションの予備的研究をおこなった。被験者は6歳になるメスのチンパンジ-1頭。最初のコミュニケ-ションの成立において、音声の有無が重要な役割をもつことがあきらかになった。
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[Publications] Matsuzawa,T.: "Form perception and visual acuity in a dhinpanzee" Folia Primatologica. in press.
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[Publications] 藤田和生,松沢哲郎: "チンパンジ-の表象能力-短期記憶再生と心的回転-。" 霊長類研究. 58-74 (1989)
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[Publications] 松沢哲郎: "チンパンジ-の認知機能の基本特性。" 心理学評論. 32(1). 91-103 (1989)
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[Publications] 松沢哲郎: "五感の言語学-チンパンジ-の赤とヒトの赤-。" 言語. 18(11). 46-47 (1989)
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[Publications] Matsuzawa,T.: "Understanding chimpanzess" Harvard Univevsity Press, 407 (1989)