1989 Fiscal Year Annual Research Report
分子性結晶場における水素原子と溶質とのトンネル効果による高選択的反応
Project/Area Number |
01628509
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮崎 哲郎 名古屋大学, 工学部, 助教授 (90023126)
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Keywords | 分子性結晶 / トンネル反応 / 高選択的反応 / 水素原子 / 固体水素 |
Research Abstract |
分子性結晶場において水素原子の高選択的反応を実現する方法として極低温における量子力学的トンネル効果による反応を利用することを筆者は提案した。トンネル反応では活性化エネルギ-が零となり極低温でも反応が起る。しかも僅かなエネルギ-差でも著しい影響を受け、反応は高選択的となる。実際、炭化水素混合結晶場において水素原子は僅かに弱い結合を持つ溶質と高選択的に反応する。この選択的トンネル反応は最も単純な分子性結晶である固体水素においても見出された。この系は分子性結晶場のモデル系と見ることが出来る。筆者は固体水素中における水素原子-分子トンネル反応の速度定数の絶対値を初めて測定することに成功した。この研究に刺激されて厳密な理論計算が日本およびアメリカで行なわれたので、それらの理論値と実験値との比較を行なった。固体水素中でのH原子の選択的トンネル反応を解明するためには、水素原子の捕捉サイトの構造を知る必要がある。筆者は固体H_2中のH原子のESRスペクトルにスピン・フリップ線を発見したので、この線の強度解析からH原子は結晶の置換型サイトに捕捉されていることを明らかにした。これらの研究成果は外国でも注目され、本年1月にアメリカで行なわれたゴ-ドン会議において招待講演を行なった。また単純な分子性結晶として希ガス固体を取り上げ、この固体中での三重水素原子の溶質(水素や炭化水素)との選択的トンネル反応を4.2Kと77Kで研究した。溶質濃度が低い時に三重水素原子は選択的トンネル反応を行なうことを見出した。 今後は、分子性結晶中の選択的トンネル反応に対する分子の配向や回転状態の効果を調べる。特に4.2KH_2分子には回転量子数J=Oのバラ水素とJ=1のオルト水素とが存在するので、これらを用いるとトンネル反応に対する回転量子状態の影響を調べることが出来る。
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[Publications] B.Tilquin,B.Guyot,T.Miyazaki,and K.Lee: "Comparison of Radiolysis of Cyclopentane,2,3-Dimethylbutane,and Neopentane at 4.2 K with That at 77 K as Studied by Analysis off Dimer Products." Radiat.Phys.Chem.33. 293-297 (1989)
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[Publications] T.Miyazaki,N.Iwata,K.Lee,and K.Fueki: "Decay of H(D)Atoms in Solid Hydrogen at 4.2 K.Rate Constant for Tunneling Reaction H_2(D_<2'>HD)+H(D)." J.Phys.Chem.93. 3352-3355 (1989)
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[Publications] Y.Fujitani,T.Miyazaki,K.Fueki,N.M.Masaki,Y.Aratono,E.Tachikawa: "Moderation and Tunneling Reaction of Recoil T Atoms in Sollid Xenon-Hydrogen Mixtured at 77 K" Bull.Chem.Soc.Jpn.63. 520-524 (1990)
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[Publications] T.Miyazaki,M.N.Iwata,K.Fueki,and H.Hase: "Observation of ESR Spin Flip Satellite Lines of Trapped H Atoms in Solid H_2 at 4.2 K" J.Phys.Chem.(1990)
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[Publications] T.Miyazaki,M.Kato,and K.Fueki: "Yields of Trapped Hydrogen Atoms and Temperature Increase in Rediolysis of Solid Hydrogen at 4.2 K" Radiat.Phys.Chem.(1990)