1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01646012
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
西尾 文彦 国立極地研究所, 資料系, 助教授 (40044789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 謙一 通信総合研究所, 大気圏電搬研究室, 室長
菊池 時夫 高知大学, 理学部, 助手 (70127926)
大畑 哲夫 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助手 (90152230)
高橋 修平 北見工業大学, 工学部, 教授 (50125390)
山内 恭 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (00141995)
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Keywords | 氷床 / 氷床氷縁・氷山 / 氷流 / 浮氷舌 / 海氷 / 氷河 / 気温上昇 / 気候変化 |
Research Abstract |
本研究は南極氷床の高度形態や氷床氷縁の変化および白瀬氷河の変動を衛星のリモ-トセンシングを利用して調査していくための基礎的な研究を目的としている。気候変化に伴って起る南極氷床の変化は、堆積環境の変化、温暖化による融解の促進、氷床氷縁の分離による氷山化が活発になり、氷床の流れが速くなって氷流化することが考えられる。平成元年度は衛星画像デ-タ(ランドサット、MOSー1など)の収集を行い、氷床氷縁・氷山の分離、氷流の流動状況を把握することに研究の主眼を置いた。とくに白瀬氷河の調査は、南極観測が始まって以来、約30年間の情報が集積されているので、衛星デ-タの解析結果を比較することができる。1973年以来のランドサット画像デ-タとMOSー1デ-タおよびNOAA衛星デ-タ、さらに地上からの観測結果を利用して以下のことが明らかになってきた。白瀬氷河の浮氷舌の末端の位置は、最も延びていたのは1961年で、その長さは約70kmにもなった。しかし、過去30年間では、浮氷舌は大きく後退して、最近の8年間では白瀬氷河の河口まで後退してしまった。この事実を衛星画像デ-タから明瞭に知ることができた。浮氷舌が漂流してなくなるのはリュツォ・ホルム湾内の海氷が広い範囲で割れるためである。このように浮氷舌の存在と海氷の安定性は密接な関係にあることが、衛星のデ-タ解析から明らかになった。海氷のリュツォ・ホルム湾内での存在の安定性と海洋環境との関連は明らかではないが、昭和基地の気温の最近10年間の平均気温の変動は大きく、上昇傾向が著しいと云える。したがって、局地的な気温上昇と海氷の不安定性が関連して、白瀬氷河の浮氷舌が後退していると考えられる。今後も海氷と浮氷舌の変動の観測を続けていくことが大切であり、とりわけ衛星デ-タによる観測の重要性はいうまでもない。平成2年度は衛星高度計による白瀬氷河中・下流域の氷床高度変動の研究を行う計画である。
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[Publications] 西尾文彦,山内恭,藤井理行,高橋修平,大畑哲夫,菊池時夫,岡本謙一,浦塚清峰: "衛星による南極・白瀬氷河の変動" 平成元年度 科学研究費補助金・重点領域研究(1)研究,成果報告書「衛星による地球環境の解明」.
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[Publications] 西尾文彦,長幸平: "LANDSAT,MOS1 衛星による南極・白瀬氷河の変動" 日本リモ-トセンシング学会誌.
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[Publications] 山内恭,西尾文彦,和田誠,神沢博,川口貞男: "昭和基地受信MOSー1デ-タによる極域大気・雪氷圏の観測序報" 平成元年度MOSー1デ-タ評価報告書.
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[Publications] 西尾文彦: "衛星から求められる南極・白瀬氷河の変動" Antarctic Record.