1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01648507
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
友田 修司 東京大学, 教養学部, 助教授 (30092282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 昌克 東京大学, 教養学部, 学振特別研究員 (50202114)
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Keywords | 分子認識 / 有機セレン化合物 / ホスト分子 / クラウンエ-テル / 有機金属錯体 |
Research Abstract |
今年度はSe-Se結合をもつ3種類のホスト分子の新規合成およびX線構造解析を行った。さらにホスト分子に取り込まれた銅(II)イオンとSe-Se結合との間に容易に電子移動が起こることを示唆する実験結果が得られた。まず、セレンユニットの最も基本的なモデル系として、無置換のo-異性体o-C_6H_4(SeCN)COClにホスト部位を導入した後に-SeCN同士のカップリングを行い、クラウンエ-テル型ホスト分子(1)、クリプタンド型ホスト分子(2)、およびキレ-ト型ホスト分子(3)をそれぞれ合成した。合成したホスト分子(1,2)についてX線構造解析を自分で行い分子構造を明かにした。1は長方形の空洞をもち2個の金属イオンを同時に取り込む可能性がある。セレン原子の超原子価性に起因すると考えられる分子内相互作用が明かとなった。同様に2においても、SeとOの原子間距離が異常に短くなっており、これらの原子間に引力的相互作用が存在することが判明した。セレン原子の超原子価性は大環状分子の安定化に大きく寄与する一方で、ホスト部位の配座を固定化し、ポリエ-テル鎖の立体配座を歪ませている。3の構造を決定するため、塩化銅(II)とメタノ-ル中で攪はんして生じる緑色沈澱を集め、クロロホルムより結晶化したところ少量の濃青色結晶が得られた。これをX線構造解析したところ、銅は6配位でSe-Se結合が酸化的に返断されセレネニルクロリドとなっていることがわかった。これは銅とSe-Se結合との間に何等かの電子的相互作用があったことを強く示唆している。この錯体はメタノ-ル中でアルケンと反応させると、ほぼ定量的にメトキシセレン化反応を生起した。今後、この錯体の反応性解明も含めて、ホスト分子1-3の錯体合成とその構造・性質に関する検討を行って行きたい。
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[Publications] 友田修司: "ジアルキル(フェニルセレノ)ゲルマンの低温マトリックス状態に於ける光照射生成物のUVスペクトル" 日本化学会誌. 1989. 1466-1468 (1989)
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[Publications] S.Tomoda: "The gamma-gauche effect in the Se-Ge-C-C system as detected by Se-77 NMR." Chem.Lett.1989. 1737-1736 (1989)
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[Publications] S.Tomoda: "Molecular structure of 2,2,5,5-tetramethyl-i,3-diselena-2-germa-cyclohexane.Evidence for symmetrical twistboat conformation." J.Chem.Soc.Chem.Commu.1989. 1304-1306 (1989)
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[Publications] S.Tomoda: "Synthesis and structure of host molecules containing Se-Se bond.Intramolecular hypervalent nature of selenium atom in the crystal state." J.Chem.Soc.Chem.Commu.1990. (1990)
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[Publications] S.Tomoda: "Double differentiation in asymmetric methoxyselenenylation of trans-β-methyl styrene." J.Chem.Soc.Chem.Commu.1990. (1990)