1989 Fiscal Year Annual Research Report
有機金属試薬のイミン類への付加反応における立体制御
Project/Area Number |
01649507
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
藤沢 有 三重大学, 工学部, 教授 (60115730)
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Keywords | 不斉合成 / 有機金属化合物 / ヘテロ原子 / 配位能力 / 光学活性イミノ化合物 / アミノ酸 / 光学活性アミノ化合物 / 含窒素天然有機化合物 |
Research Abstract |
有用な生理作用をもつ光学活性含窒素化合物として天然にはアミノ酸を始めとして各種アルカロイドなど数多く存在するが、その生理活性の発現には、窒素原子と結合した炭素の立体化学が重要である。従ってその有用な前駆体となる光学活性アミン化合物の任意の鏡像体の供給がそれらの化学合成の際に要求される。従来の不斉合成では用いる不斉源が一方の鏡像体に限られることが多いため、合成できる生成物も一方の鏡像体に限られる。本研究では有機金属化合物の酸素、窒素、硫黄原子等のヘテロ原子への配位能力が異なることに着目し、光学活性イミン化合物への有機金属試薬の付加反応において、用いる金属種を選択することによりアミン化合物の二つの異性体を夫々選択的に与えるイミン基質の設計を検討した。その結果(S)-2-メトキシ-1-フェニルエタノ-ルをα位に導入した0-ベンジンオキシムに対するアリル金属試薬の付加反応において、アリルセリウム試薬あるいはGrignard-塩化セリウム試薬を夫々選択し分けることにより対応するアミンの両異性体を夫々合成することができた。この場合原料のオキシムの立体化学が選択性に大きな影響を与えることを見いだし、特にE体のオキシムを用いると高い選択性が発現した。さらに、α-ベンジルオキシイミノ酢酸(S)-2-メトキシメチルピロリジンアミドに対するアリル金属試薬の付加反応においてはアリルスズ-四基塩化スズ試薬あるいはアリルチタンア-ト錯体を選択し分けることにより、α-アミノ酸誘導体の両鏡像体を選択的に作り分けることに成功した。また、同じ不斉源をヒドラゾン部位に導入したα-ヒドラゾ酢酸への付加反応においてもアリルホウ素試薬あるいはアリルチタンア-ト錯体を選択し分けることによりα-アミノ酸誘導体の両異性体を作り分けることができた。上述したように有機金属試薬の配位能の差を利用した光学活性各種アミン化合物の両鏡像体の選択的合成手法は有機合成化学上極めて有用であり、各種含窒素天然有機化合物の合成に広く活用できる手法である。
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