1989 Fiscal Year Annual Research Report
脳内透析法による記憶・学習に関係する神経伝達物質定量の試み
Project/Area Number |
01810002
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Developmental Scientific Research
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小嶋 祥三 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70027499)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 基治 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (10027500)
三上 章允 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (40027503)
久保田 競 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (30027479)
|
Keywords | アカゲザル / 脳内透析法 / 高速液体クロマトグラフ / 遅延反応 / 前頭連合野 / ド-パミン |
Research Abstract |
脳内透析法と液体クロマトグラフにより、学習や記憶に関係する神経伝達物質を定量した。そのために1頭のニホンザルに2つの課題を訓練した。1つは遅延反応課題で、前頭連合野が関与する空間位置の短期記憶課題と考えられている。もう一方は遅延を含まない、すなわち短期記憶への負荷がない統制課題である。これらの課題を遂行中の被験体の前頭前野に透析チュ-ブを挿入し、透析膜を通って潅流液に入ってくる脳内物質を含むサンプルを、液体クロマトグラフを用いて定量した。遅延反応課題は、正位置を指示する手がかり刺激をテレビモニタ-に提示し、反応はモニタ-前のキイに行う間接法で、手がかり刺激が消失する遅延時間は8-15秒であった。統制課題では、遅延中に正解の位置を指示する手がかり刺激が常時提示されていた。これらの課題は40分毎に交代され、各課題遂行中に2回、すなわち20分毎にサンプルが回収された。前頭前野の主溝を中心に15カ所から合計29のサンプルが回収された。今年度はド-パミンに焦点を当てて定量した。そしてド-パミンの放出量が遅延反応と統制課題で異なるか、前頭前野の部位によって異なるか、またプロ-ブの深さ(層)によって異なるかを検討した。ド-パミンはおよそ0.5nM程度で、29サンプル中21サンプルで、統制課題に比べ遅延反応で放出量が大であった(サインテスト、5%で有意)。部位については主溝付近でこのような結果がえられる傾向があった。層に関してはド-パミンの量が少なく、明瞭な結果はえられなかった。したがって、この方法は行動機能の分解能、深さ方向を除く空間分解能を有する。この結果は空間位置の短期記憶課題遂行中に、前頭前野からド-パミンが放出することを明らかにした。これは脳切除やニュ-ロン活動記録の結果と一致する。来年度はノルアドレナリンの定量を行う予定である。
|